吃音の治療

大人の吃音治療:後悔しないための2つの要点

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仕事の電話で吃音のために会社名が言えず、時にはずっと吃音のことばかり考えてしまうことはないでしょうか?吃音があるがゆえに仕事への不安が募ることもありますよね。

このような日々の不安から解放されるために、あなたが吃音の治療を希望されたとしても、どのような治療を受けるべきかの選択する基準がわからないかもしれません。

あなたが吃音の悩みを解決するために治療を受けるとしたら、あなたの現状に合った治療法を用いていく必要があります。また、吃音治療には、きちんと行えば比較的有効な治療法もあるのです。吃音の治療を考えている方は、本文をお読みいただき、どのような治療を受けるべきかを考えてみてください。

 

大人の吃音治療の選び方

吃音の治療は、あなたに合った方法を選ぶことで、治療の成功率は上がります。なぜなら、吃音と一口に言っても、言語症状が中心の場合と、心理的な問題が中心の場合があるからです。

例えば、日常会話で誰と話すときも吃音が出る人と、会社の電話のときにしか吃音がでない人は、同じ吃音治療が有効とは言えません。吃音治療で後悔しないために、以下に紹介する自分に合った方法を見つけて、吃音治療を選んでいきましょう。

セラピーは、個々のクライアントのニーズに合わせて行わなければならない。

バリー・ギター

出典:「吃音の基礎と臨床」統合的アプローチ 学苑社

 

大人の吃音治療一覧

大人の吃音の治療には、以下のような治療法があります。

発声練習などを中心としたやり方


発声練習などを中心としたやり方は、吃音の症状に直接働きかけていくことから、直接法とも呼ばれます。

流暢性形成法

どもりにくい発声を習得することによって、楽に話せるようになります。まずは訓練室で楽に話せるようになり、だんだんと日常会話でも使えるようになっていくことを目指します。具体的には、ゆっくり話すことや、発声をする際に柔らかな声の出し方を習得していきます。

当然のことながら、実生活で使えることが大事です。よくあるのが、吃音の訓練を行っているところだけしか、その方法が使えないことです。その場合には効果があったとは言えません。実生活でもきちんと応用できるような効果のあるセラピーを受けていきましょう。

吃音緩和法

吃音への否定的な考え方を和らげ、だんだんと楽にどもることができたり、楽に話せるようになっていく方法です。吃音緩和法の段階を簡単に説明すると、

1、まず自分の吃音の症状や否定的な考えがあることを知っていき、自分の吃音を客観的に捉えれるようにしていきます。要は、自分の吃音を知り、向き合えるようになることを目指すのです。

2、そして、自分の吃音と向き合いながら、楽にどもれるやり方を学び、実際に会話で使えるように取り組んでいきます。楽にどもれると、話すことの苦痛が減ります。

吃音を否定するのではなく、吃音とありのままに向き合うことで、楽に話せるようになることがあります。
吃音研究者ヴァン・ライパーは、吃音への恐れ、回避(話すことを避けることなど)を軽くしてくことが大事だと述べています。

The treatment of stuttering :Charles Van Riper(1973)

統合的アプローチ

流暢整形成法と吃音緩和法を組み合わせていく方法です。これらを上手に組み合わせることで、楽に話すことができます。また、どもったとしても、できるだけ軽く済ませていくことを目指します。

現在、言語訓練は統合的アプローチが主流になっています。また、統合的アプローチに認知行動療法を併用することもあります。認知行動療法については、後で述べていきます。

DAF(Delayed Auditory Feedback:遅延聴覚フィードバック)

※画像はイメージです。

DAFとは、自分が話した声を少し遅らせて聞き取ることができる装置です。言葉を遅らせて聞くことで吃音の軽減を目指すのです。

当然ですが、言葉を遅らせて聞くことは、すべての吃音がある人に有効ではないため、効果は人によって変わります。DAFには、無料のアプリもありますので、アプリストアで検索し、試しに使ってみると良いでしょう。

DAF訓練終了の12~18ヵ月後の追跡調査においてもその効果は維持されていた

「吃音に対する聴覚遅延フィードバック効果の症例的研究」 遠藤眞

特殊教育学研究12巻(1974年)2号より引用

集中的なプログラム

統合的アプローチを用いて、短期間で吃音の克服に挑戦するプログラムです。海外ではこのようなプログラムが実施されることがありますが、日本では、ほとんどやっているところはありません。

発声指導を徹底して短期間で学び、話しかけ訓練に何回も挑戦していくのですが、欧米に比べると恥ずかしがり屋の人が多い日本人の文化には、こういった方法は合っていないかもしれません。

 

心理的な問題を解決していくやり方

心理的な問題を解決しながら、吃音の症状を和らげていくため間接法とも呼ばれます。

カウンセリング

心理士やカウンセラーによって、カウンセリングを受けることで吃音が楽になる人がいます。根本的な治療とは言えないかもしれませんが、吃音を楽に考え直すことができたり、話を聞いてもらうことで吃音が楽になることがあります。

NLP(神経言語プログラミング)

1970年代にアメリカで提唱された心理療法の技法です。海外の吃音治療では、NLPを使う先生もいらっしゃいすが、日本ではNLPのカウンセラーが吃音へのアプローチを行っているのを見かけることがあります。

吃音への嫌な考え方や意味づけを変えていったり、NLPのワーク(イメージしたり、紙に自分の考えを書いたりします)を行い、嫌な記憶として残っている吃音の失敗経験を薄れさせていったりして、吃音の改善を促していきます。

これは非常に大事なポイントなのですが、吃音の治療は言うまでもなく吃音に対する正しい知識が必要です。正しい知識とは、過去の吃音研究の根拠に基づいた情報です。他のカウンセリングも同様に、技法のみではなく吃音を本質的に理解された上で、このような技法を用いていく必要があります。

自律訓練法

自律訓練法は、ドイツの精神医学者シュルツによって開発された、心身を効果的にリラックスさせる方法です。どのようなことをやるのかというと、心の中で「手足が重い、手足が暖かい」などの文言を唱えていき、自己催眠状態を作っていきます。

自立訓練法で、吃音を根本的に治療させるのは難しいかもしれませんが、自律訓練法を行うことで不安な状態からリラックスできるようになり、その結果として吃音が軽くなることもあります。

不安階層表によるメンタルリハーサル

話すのが不安な場面を、不安の軽い順に並べていき、軽い場面から段階的にイメージを用いて練習する方法です。吃音で失敗してしまう場面への不安・恐れを段々と克服していく方法です。

当然ですが、きちんとこの技法を理解している経験のあるセラピストによって行われます。

年表形式のメンタルリハーサル法

年表形式のメンタルリハーサル法は、日本で開発された方法で、幼少期からの吃音経験などの場面をイメージしていく方法です。自然に話す方法を目指すため、テクニックとの併用は禁止されています。また、即効性はなく、3年という期間が必要と言われています。

認知行動療法

認知行動療法とは、様々な心理療法の技法から成り立っています。人の行動に焦点を当てた行動療法、人の認知(物事のとらえ方)や思考に焦点を当てた認知療法など、様々な技法があります。

あなたの吃音に対する考え方、吃音があるためにあなたが行っている行動、これらを総合的に見ていきながら、必要な技法を用いてセラピーを行っていきます。

例えば、「どもったら他人に変な人だと思われるのではないか?」という考え方を持っていることで、あなたが苦しんでいるのであれば、「私がどもっても、相手の人生には何の関係もない」と思えるになったら、あなたの気持ちは楽になるかもしれません。

このように、あなたの考え方や行動が変わることによって、不安が軽減したり、場合によっては吃音症状そのものが軽減することがあるのです。

 

あなたの吃音は、どのような吃音か (原因など)


まず、吃音には、以下のような原因が考えられています。

体質的な原因(つっかえやすい体質)

環境的な原因

ストレスなど心理的な原因

病気や事故などによる脳の損傷

あなたが子供の頃からの発達性吃音の場合には、体質的な原因が70%を占めると言われています。子供の頃は吃音が出ていて一旦は治っていたとしても、発症が10代の前半までなら、この吃音に当てはまります。

吃音は、急激な言語発達の副産物である!頭の中で一気に増えていくことばに、口がついてこられないために吃音は起こるというのが、Reillyらの研究で示された結果です。

医学博士菊池良和監修「吃音のことがよくわかる本」講談社より

大人(10代後半以降)になってからの吃音は、ストレスなど心理的な原因によるもの、脳の損傷などによるものがあります。

その他の原因として、滑舌が悪くなることで言葉が詰まる人、他の発声障害(吃音に似た言葉がつまる症状)の場合もあります。

 

あなた吃音は今、どのような状態なのでしょうか?

あなたは、どのような場面で困っていますか?日常会話で誰と話すときにも吃音が出ますか?上記にご紹介した吃音の治療法は、あなたの吃音の種類や状態によって選ぶ必要があります。と言っても、自分で判断するのは難しいと思いますので、ご参考までに、他の人の改善事例を見てみましょう。

吃音の改善事例

ここでは、吃音を改善されたの大人の吃音改善事例をご紹介します。あなたが自分に合った方法を考えるためにご参考になさってください。

<ケース①>

年齢 性別 職業 吃音発症年齢
40代 女性 パート 小学2年頃

この方は、子供の頃からの吃音ですが、症状はそれほどたくさんあるわけではありませんでした、しかし、形式ばった場面になると、「どもったらどうしよう・・・」という不安を常に抱えていらっしゃいました。
吃音を持つ人の多くは、「どもりたくない!」と気持ちがあります。しかし、この気持ちは、必ずしも症状とは比例しません。

お手紙にもありますように、この方は「吃音は自分の気持ちと心次第で改善でいるのだと思います」と述べられています。もし、この方に言語訓練を行っても効果はなかったことでしょう。

【ご本人のコメント】

初めてセッションを受講してから1年が経ちました。私は、小学生頃から、どもりがあり、人前で話す事が嫌でした。学生時代に友達から笑われるような事もあり、増々話す事が苦手になりました。

セッションを受けて、半信半疑でしたが、少しでも改善するならと通いました。セッションは、吃音の事を良く理解されていて、気持ちの部分でも分かってもらえた事は嬉しかった。

吃音は自分の気持ちと心次第で改善する事ができるのだと思います。私は、半年が過ぎた頃から自信が少しついてきて、何かが変わった様に感じました。

話す事で、自分自身をもっと知ってもらい、わかってもらおうとする気持ちが強くなりました。今は、緊張する事は少なく、吃音が出るとは思いません。

<ケース②>

年齢 性別 職業 吃音発症年齢
20代 男性 接客業 中学生の頃

過去に受診された病院では言語聴覚士から「吃音は治らない」と言われていたそうです。しかし、職場で話す機会が増え、なんとかしないといけないと思い、こちらにご来所されました。

初めてお会いしたときの印象として、この方は、吃音が出ているのですが、さほど気にしていない様子でした。ただ、「心の問題ではないと思うけど、話すときに不便だ」ということをおっしゃっていました。

そのため、言語訓練を行い、楽に話せる方法を一緒に練習していくうちに、職場でも楽に話せるようになっていかれました。

【ご本人のコメント】

10代のころから吃音で、声が出しにくかったのですが、セッションを始めてから、声の出しやすい方法やコツを教えていただきまして、本当に話しやすくなりました。

<ケース③>

年齢 性別 職業 吃音発症年齢
30代 男性 接客業 20代

この方は、大人になってからの吃音症です。お仕事で顧客対応の際に、吃音の症状が出て困っていらっしゃいました。認知行動療法などを用いて、比較的短期間で改善されました。

【ご本人のコメント】

私は子供のころからの吃音ではなく、大人になって、就職してから吃音が出はじめました。最初のころは自分に何がおきているのかもわからず、どうしていいかもわかりませんでした。そんな時に東京吃音改善研究所を知りワラにもすがる思いで受講しました。

セッションで何が原因でどもってしまうのか、自分の体がどうなっているのか、どうしたら良いのか、など多面的にご指導いただき、わずか3ヶ月ほどで改善できました。元々の吃音者でなかった自分にとっては、見失っていた本当の自分をとりもどせた気分です。

もし受講しようか迷っている人がいたら受講すべきです。行動しなければ現状は変わりません。自分を変えられるかどうかはあなた次第です。

吃音が改善されることによって得られる変化

吃音が改善されると、以下のようなところが変わります。

・仕事のときに、吃音以外のことに集中できる

・人と会うときや、発表の何日も前から吃音のことを考えなくて良い

・会社名や自分の名前を言う場面で困らなくて済む

・変な人だと思われるかもしれないという悩みから解放される

今まで、吃音のことばかり考えていた人が、本分である仕事の内容やスキルアップのための勉強に集中できるようになります。また、他人からどう思われているのかを気にしている人は、そういった心配も、薄れていくことが多いです。

ここで、一つあなたに質問です。

「あなたの吃音が改善されたら、どのような姿になっているのでしょうか?」

一度ここで想像してみてください。

想像できましたか?

このような質問をさせていただくと、「想像できました」という人ももいれば、「吃音が治るとはなかなか思えない」という人がいます。かくゆう私(この記事を書いている私)も、吃音当事者として30歳ごろまで、ずっとそう思ってきました。

1年365日、ずっと吃音は付きまといますし、それを何年も続けてこられたのであれば、治らないと思っても当然です。吃音が本当に良くなるかどうかは、結果が見えてこないと、実感できないものです。

 

みんなが疑問に思うこと

今まで受けたご質問の中で、代表的なものをここに挙げてみます。

Q.吃音は、本当に治るのですか?

完全に治る人もいますし、ある程度の状態まで改善される人もいます。自分に合った方法で取り組むことで、多くの方は吃音を改善することができます。

Q.吃音が治った人はいるかもしれないけど、自分にも当てはまるのですか?

過去に自分と同じような事例があったか、直接聞いた方が良いです。あなたの吃音がどのようなものか、あなたもセラピスト側も一緒に理解された上で、治療に取り組まれるのが良いです。

Q.訓練すると、変な話し方になるのではないか?

変な話し方にはなりません。古典的なセラピーでは、変な話し方になるようなこともあります。誰しも変な話し方になりたくないはずです。そのようなセラピーはやめた方が良いでしょう。

また、言葉を楽に話せるようになるセラピーは、訓練室だけで有効な場合や、やり始めた時期だけ有効な場合があります。このようなセラピーは一時的な効果しか得られず、あなたの吃音を改善させるとは言えません。

Q.早く治したいのですが、どれくらいの期間がかかるのでしょうか?

期間は、人によって異なります。また、設定するゴールによっても異なってきます。「ある程度、楽に話せるようになればいい」と言う人もいれば、「ちゃんと治したい」と言う人もいるからです。

上記の改善事例で示した方の中には2ヶ月で良い状態になられた方もいますが、良くなった状態が1年以上続かなければ改善とは言えません。

治療を受ける人の声を聞くと、数ヶ月から長くて3年以上かけて取り組まれる人もいます。また、成果が早く出るかどうかは治療を行うセラピストがどのような技法を用いるかにもよります。

 

吃音治療を選ぶときの大事なポイント

吃音治療を選ぶときの一番大事なポイントは、あなたに合った方法であるかを確認し、あなたの吃音に合わせて行うことです。記事の最初にも述べましたが、普段からの日常会話でどもっている人もいれば、電話などの特定場面だけでどもる人がいます。

電話だけでどもる人の場合、楽に話せる練習をしても実際には使えないこともあります。そのため、一般的には心理的なアプローチの方が合っていると言えます。

心配な方は、実際にセラピストに会ってみて、確認してみることをお勧めします。実際に会ってみないとわからないことも多いですし、相談しながら決めていけば良いのです。

また、もう一つ大事なポイントは、吃音の改善率はどれくらいかを確認することです。上記の事例の方のように、病院で言語聴覚士が行っている訓練などで、「吃音は治りませんから、受け入れていくことが大事です」と言われることも少なくありません。

吃音の治療で大事なのは、「良くなったかどうか」という結果です。この記事を書いている私も、日本では物足らず海外の治療法をたくさん学んできましたが、吃音治療には様々なアプローチがあることを知りました。

マニュアル通りの古典的なセラピーは、気休めに過ぎません。医師や言語聴覚士で優れた臨床家もいますが、当然ながら吃音の基礎知識だけはあっても経験がなく、治せない人もいるのです。直接聞いてみると分かりますが、言語聴覚士でも医師でも吃音のことをよく分からないという人はたくさんいます。

そのため、やみくもに病院に行くのではなく、吃音の治療を行っている病院や専門機関で受けることが大事です。行かれた際には、吃音治療の実績、改善率を聞くことをお勧めします。

 

まとめ

吃音治療を受ける際には、必ずこの2点を確認してください。

・その方法は本当に自分に合った方法なのか?

・改善率はどのくらいか?

以上、吃音治療を選ぶポイントについて述べました。ご参考になさってください。

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