学校生活

中学生・高校生は、吃音の悩みにどうやって向き合っていけば良いのか?

思春期の吃音に悩む中学生・高校生の多くは、学校でどもって嫌な思いをしたくないと願っています。そんな時に、たとえば周囲に吃音を理解してくれる人がいるだけでも、不安な気持ちが少し和らぐことがあります。
そうはいっても、誰にも言えずに一人で悩みを抱えている中学生・高校生が多いのではないでしょうか?
この記事では、吃音で悩む中学生・高校生のみなさんが学校で少しでも過ごしやすくなるようなヒントをご紹介していきます。

吃音で悩む中高生が学校で過ごしやすくなるためのヒント

吃音を抱えながら学校生活を送るために、いろいろできることはあります。一人で抱えて悩み続けるよりは、気持ちが楽になるように、少しでも行動を起こしていきましょう。

吃音の理解者を増やす

まず、吃音の特性の一つとして「孤立感を抱える」という傾向があります。「孤立感」とは、自分が一人ぼっちな気持ちになるということです。思春期には、誰にも言いだせずに、吃音を抱えている人はたくさんいます。
では、なぜ孤立感を抱えてしまうのでしょうか? その理由はいくつかありますが、自分の周りの人はスラスラ話しているのに、自分だけどもってしまうという経験が大きく由来します。
話すという当たり前の行為ができないことに対して、吃音が周囲の人に、正しく知られていないことも重なって、孤立感や劣等感を感じます。
「どうして、どもってしまうのか自分でもよくわからない」という苦悩、「みんなにわかってもらえない」という孤立感を抱えて悩んでしまうのです。

友人の存在が大切

そんな時、傷ついた気持ちを和らげてくれる「友人の存在」はとても大切です。思春期は仲間との関係の中で自分の価値観を形成していく時期でもあり、友人の影響は大きいものです。
友人に自分の悩みをわかってもらえているだけでも心の支えになるでしょう。でも、話し出すまでは、「わかってもらえないのではないか」という不安があるかもしれません。
友人や周囲の人は、意外と気にしていない人も多く、「あ、そうなんだ」という反応をする人もいます。あなたが思うほどに、他人は吃音のことを気にしていないことが多いです。
当然ですが、友人との関係が大事です。打ち明けるときには、仲の良い信頼できる友人に、打ち明けるようにしましょう。
友人に対して吃音の悩みを打ち明けることで友情が深まることもあります。誰でも、人には言いづらい悩みを一つか二つは持っているものです。悩みを打ち明けることは、友情を深めることにもつながります。

先生に話す

学校生活では、先生の存在も大きいです。先生に理解してもらうことも大切です。先生を吃音の理解者にしていくことで、自分の安心感が増えていきます。
また、学校の先生も吃音経験者でない限り、正しい吃音の知識を持っていない人も多くいます。伝えてあげないと、先生も、どう対応して良いかわからない場合があります。
先生に対しては、自分一人で対応せずに、親に話してもらう方が良いでしょう。自分がしてもらいたいこと、してもらいたくないことを親と一緒に整理して、親に伝えてもらいましょう。
例えば、音読が苦手な人の場合、あまり当てられないようにするのか、挑戦していく方が良いのかも人によって違います。学校の状況や、あなたの吃音の程度によっても変わってくるので、相談しながら一番良いやり方を先生と一緒に決めていけば良いのです。
もし、一人で話す時に、どうやって先生に吃音を説明してよいかわからない人は、先生に吃音を説明するためのツールを使ってみましょう。学苑社という出版社のサイトに九州大学病院の菊池先生が作成された用紙があり、サイトからダウンロードできます。ダウンロードされたい方は、こちらをクリックしてください。

できる範囲で周囲にカミングアウトする

吃音をカミングアウトすることで気持ちが楽になることがあります。とても勇気のいることなので、無理に行う必要はありません。できる人だけやれば良いです。
例えば、「僕は吃音というのがあって、言葉がつまってしまうことがあります。焦ると余計につまることもあるので、少し時間がかかる時もあります」と発表の時に事前に伝えることができたなら、自分の気持ちが楽になることにつながっていきます。
「これは吃音症っていうんだ」「どもる時があるけど、吃音はそういうものだと思って、気にしないで」と言える範囲で良いので、さらっと伝えられると良いですね。

学校での行事

学校の行事の中みんなの前で決まった言葉を話さなければいけなかったり、自分の意見を発表する機会も多いです。吃音を持つ人たちにとって、できることと、できないことがあるのも事実です。
例えば、自分の名前がうまく言えないときには、事前に先生に話しておいて、「もし言えなかったら、その時にはフォローしてもらう」ように前もって要請することも良いでしょう。
最初から、代わりに先生に言ってもらうと「みんなと違うこと」に対する抵抗感も出てきます。一応は、自分から発言するようにしておき、言えなかった時だけフォローしてもらうのも良い方法です。

部活の過ごし方


「部活で号令をしなければいけないけど、言葉が出ない」との悩みを抱えている人もいます。もし、そのことがきっかけで部活を辞めようかなどと考える人がいるとしたら、それは違います。
あなたは、部活をしに行っているのであって、どもらないように部活しに行っているのではありません。ここは、部の顧問の先生やメンバーに協力してもらい、ストレスなく部活だけに打ち込めるように環境を整えることが優先です。
あなたが部活で困らなくて済むように、親や、信頼できる先輩、先生に相談し、協力してもらいましょう。

受験の面接

面接は誰しも緊張しますが、吃音があるひとにとっては、面接は「最も、どもりやすい状況」でもあります。
面接対策としては、まず、学校に事前に伝えておくことも良いです。親と一緒に、担任の先生に伝え、受験先の学校に伝える方法を相談しましょう。
吃音が出ることで不利になると考える人も多いですが、実際には、どもっても合格したという人はたくさんいます。大事なことは、誤解されないようにすることです。
どもりを隠そうとしたり、言葉が言えなくて、誤解をされることがあります。吃音があって言えなくなったときに、面接官に「話がまとまっていない」などと、誤解をされないようにしたいものです。
吃音のためにスラスラ言えないことは、何も問題ではありません。吃音があっても、入学して学校で勉強することはできます。面接では、「どもらないように頑張ろう」とするのではなく、「自分の考えをいかに伝えるか」を優先に取り組んでいきましょう。

いつか自分で説明できるように力をつけよう

吃音のことを自分で説明できるようになると、誤解も減りますし、なにより気持ちが楽になります。今すぐではなくても良いので、いつか堂々と自分で吃音を説明できるようになりましょう。
吃音を説明できるという自信が、吃音の症状軽減にもつながることがあります。最初は親や先生の協力を得ながら、周囲に理解を促し、いつかは自分で説明できるようになっていってください。

吃音そのものへの対策

このサイトの中にも、トレーニングについては今後も書いていきますが、一人で行う「どもらないためのトレーニング」などは、すべての人がうまくいくわけではありません。
そのため、この記事では、トレーニングしましょうという視点では書いていません。もちろん、改善への取り組みや、トレーニングをすることで良くなれば、それに越したことはありません。
他の記事も参考にしていただき、できるようなら自分で対策をするのも良いでしょう。

治療を受ける

親御さんと相談し、吃音を改善していくために治療を受けるというのも選択の一つです。一人で行うトレーニングはとても難しいので、専門家の支援を受けていくのも良いでしょう。費用や時間もかかるので、親御さんとしっかり話し合いましょう。

まとめ

吃音を抱えて学校生活を送るには、周囲への理解を進めることが大切です。どもらないことを先に考えるのではなく、自分が過ごしやすい環境を整えながら、勉強や部活に集中できるようにしていきましょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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