吃音の治療

吃音(どもり)治療における2つの指標(吃音を取り巻くもの)

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吃音(どもり)治療における2つの指標

 

 

 

東京吃音改善研究所における吃音(どもり)治療についての考え方をお伝えします。

 

 
吃音(どもり)だけに目を向けると・・・

 

 

吃音に悩む多くの方々は、吃音を治療する、すなわち吃音自体に働きかけて吃音を無くそうとするのではないでしょうか?

 

 
例えば、「この吃音さえなければ・・・・」
と吃音自体に目を向けて、その症状だけを消そうとするように。

 
もちろん、直接法を用いて吃音を軽減させていく事は可能だと思いますし、それだけで良くなる方もいらっしゃるでしょう。

 
ですが、吃音にフォーカス(集中)し、吃音をやっつけよう、消してしまおうと一生懸命に頑張り続ける事は、かえって吃音に対する意識を強めてしまいます。

 
この場合にも改善はバランス良く行っていく事が大切なのです。

 
※言うまでもありませんが、治療というのは医療行為ですのでこちらでは改善や管理という言葉を用いていますが、吃音から解放されるという同じゴールを目指しています。

 
吃音に関する二つの指標

 

 

ここで、バランスの事をお話しする中で、以下の二つの指標を見ていただきたいと思います。

 

 

一つ目は、
CALMSモデル(吃音の悩みを表す指標)で用いられる

認知、感情、言語、運動、社会生活です。

 
それぞれご説明しますと、
認知とは吃音に対する評価です。

 

「どもる私がいけないんだ」

 

「どもりだっていうのを知られたくない」という認知

 
感情は予期不安や恥ずかしさなどです。

 
「ああ、どうしよう、どもるかもしれない」

 

「どもったら恥ずかしい」という感情

 

 

言語は苦手な言葉や談話の複雑さのことです。

 

「おはよう」の「お」が言えない

 

論理立てて説明できない

 
運動はスピーチの動きや吃音症状です。

 

難発や連発などのどもりの症状

 
社会生活とは話す際の状況を指します。

 

怖い先輩と話すとき

 

電話の対応をするとき

 

引用:Clinical Applications of a
Multidimensional Approach for
the Assessment and Treatment
of Stuttering(Healeay et al., 2004)

 

二つ目は、NSA(全米吃音協会)などで用いられる吃音ヘキサゴンです。

生理的反応、行動パターン、感情、意図、信念、認識の6つの側面から成り立っています。

 
生理的反応とは、どもった時にとっさにとる反応です。

 

身体が硬くなる

 

呼吸が苦しくなる

 
行動パターンとは、吃音が出る時の随伴運動などの行動のことです。

 

舌を出して話そうとする

 

身体の反動を使って言葉を出すこと

 
感情とは予期不安や恥ずかしさです。

 

「恥ずかしい」

 

「話すのが怖い」

 

 

意図とは、どもらないようにしようという考えなどをいいます。

 

「絶対どもらないように話そう」

 

「どもりを隠して話そう」

 

 

信念は「自分のどもりは治らない」などの信念です。

 

「私の吃音は他の人とは違う」

 

「吃音は治らないものだ」

 
認識は吃音に対する否定的な評価などです。

 

「どもりの俺は人より劣っている」

 

「1回でもどもったら許せない」

 
引用:REDEFINING STUTTERING
What the struggle to speak is really all about
2011 EDITION(by JOHN C. HARRISON National Stuttering Association)

 
上記の指標からもわかるように、吃音を持つ人には吃音症状と二次的症状(吃音症状以外の症状)に留まらず様々な困難を併せ持っています。

 
国内、海外の多くの研究者が言われるように、目に見える(耳で聞こえる)どもりの症状自体は氷山の一角なのです。

 

 
どもらない瞬間はありますか?

 

 

ところで、あなたは吃音が出ずに話せている瞬間はあるでしょうか?

 
例えば、自然に返事をするときやプレッシャーをほとんど感じずに文字を読むときなど「どもっていない瞬間」はありませんでしょうか?

 
多くの方は、そういう瞬間も持ち合わせているはずです。

 
ですが、吃音が出ると吃音の症状ばかりに意識を奪われ、上手く言えている瞬間や、もっと言えば吃音以外の自分の能力(優しい性格であったり勉強が得意であるといった自分に備わる能力)までも否定してしまいがちになります。

 

 

プラスに目を向けていますか?

 

 

時にセッションにおいて私は、

来られたばかりの受講者さんに対して

 

 

「今のお話を聞く上では、きっと仕事がデキるんですね!」

 

「そんなに気を遣うなんて、すごく優しいんですね」

 

「とても真面目な性格なんですね」  

 

 

等、その方に対して気付いた事をお話しすると、
多くの方はその事よりも吃音のことで自信をなくしていらっしゃる場合が多いのです。

 

 

 

ですから、そういった今まで気付いてなかった魅力を再発見しながら、
自信に満ちた自分自身の再構築を行っていくのが良いのではないかと私は感じています。

 

 

周りはそこを見ています

 
自分の話ですが、私は吃音が改善した今でも、改善する前の友達との関係が続いています。
(当たり前の事ですが・・・^ ^ ; )

 
自分で言うのも変ですが、彼ら(私の友達)は私の吃音の有無でこれまで付き合ってきたわけではなく、私の持っている他の特質を理解し共有してくれていたのです。

 
あなたもそういう体験はありませんでしょうか?

 
きっとあるはずです。

 
そうは言っても、この記事をお読みくださっている方は、

 
「吃音を仕事上の問題で解決したいから」
「そんなことより吃音を治したい」と思っていらっしゃることと思います。

 

 
あなたの魅力は、あなたの中にある

 
ともあれ、今の自分の吃音以外のところにも今一度目を向けていただきながら、改善に取り組まれる事をお勧めします。

 
吃音をコントロールしていく事自体も大きな自信につながることと思いますが、
本来あなたのもっている魅力はあなたの中にあるのです。

 

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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