もくじ
吃音症を知ってください
この記事は毎年この時期になると書いていますが、近年は吃音症が少しメディアで取り上げられたり、SNSなどの広がりがあったりしたことにより、吃音症が以前よりは世間に知られてきたようにも思います。
しかし、まだまだ、目の前の現実には、吃音症を理解されずに苦んでいる人がたくさんいます。
100人に1人という吃音症は、吃音を知らない多くの人にとって、当事者や家族など周囲にいなければ、そこまで関心を持つことがないかもしれません。
もし、この記事を見て初めて吃音症のことを知っていただける方がいたら、とても嬉しいです。少しだけお付き合いください。
吃音症(どもり)とはどのようなものなのか
まず、吃音症の基本的なことについて、ざっくりとお伝えします。
吃音症は、もともと体質などが主な要因で発症する言語障害です。子供の頃から吃音が発症する人が全体の9割を占めており、大人になってから発症する人もいますが、割合は少ないです。
「言葉がかむ」という現象と同じように見られることがありますが、一般的な「言葉がかむ」とは異なります。多くの吃音の人は、言葉がつまる症状が慢性化して、言葉の詰まりが強くなっていく(言葉が発せられなくなる)傾向にあります。
吃音を持つ人の特徴は、以下のようなものがあります。
1、言いたい言葉がスムーズに言えない
お伝えしたように、普通に話そうとしても、言葉が連続して発せられてしまったり、頭で言葉が浮かんでいても、声帯(喉に位置する声を発するところ)から通常通りに声が発せられなくなります。
具体的には、「あ、あ、ありがとうございます」のように、言葉をどもりながら発したり、「・・、あ、・・・・」のように、言葉が出てこなかったりする症状があります。
この言葉が出てこない症状を難発といいますが、当事者にとっては、これが最もつらいのです。
2、特定の状況、特定の言葉で吃音が出る人が多い
吃音は、常に言葉がどもっている時ばかりではなく、楽に話せることもあります。成長とともに苦手な言葉や苦手な状況だけで症状が出る人がいます。
例えば、普段の会話は話せるのに、自己紹介では名前を発することができない。※普段の会話の時には、言いづらい言葉を言い換えたり、うまくごまかしたりして吃音を隠している人もたくさんいます。
3、本人にとっては、とても恥ずかしく、人によっては劣等感を抱えている
みんなが当たり前のように発する言葉が言えないことに対して、吃音を持つ人たちは劣等感を抱えている人が多いです。そのため、できるだけ吃音を知られたくないと考えています。
このような吃音症に対して、周囲の人がからかうことで、心に傷を受けたり、からかわれたことで悪化することがあります。
吃音症は、よく氷山に例えられます。氷山とは、画像の写真にもありますように、海の上に浮かぶ氷の山です。ちなみに、氷山は、海の下にも大きな氷の部分が存在しており、通常は見ることができません。
この目に見える氷の山の部分が吃音症状とすると、目に見えない海の中にある氷の部分は、恥ずかしさや恐れなど様々な葛藤とも言えるわけです。
当事者は、吃音への劣等感などをはじめ、目に見えない部分で様々な悩みを抱えているのです。
吃音症理解のためにお願いしたいこと
今後、もしあなたが吃音の人に出会ったり、「吃音症かもしれない」と気づいたりしたときには、できるだけ、当事者の心情を理解していただき、その人の味方でいてほしいのです。
具体的には、その人がどもっていても、自然体で普通に聞いていてもらえれば、少しは気持ちが楽になります。
また、「ゆっくり話したほうがいい」などの話し方のアドバイスは有効ではないのでしないでいただきたいです。ゆっくり話そうとしてもうまくできないことがあることを知ってください。
人によっては、あまり深刻に受け止められるのもつらいので、「おいおい」など、軽く突っ込まれることで、気持ちが和む人もいます。もちろん、人間関係があってこそのことですが。
特にプレッシャーを伴うような場面では症状が出やすくなる人が多く、当事者にとっては、ただ言葉がつまるだけではなく、言葉を出したくても出てこない葛藤や、恥をさらされる恐怖を常に抱えていることがあるのです。
あなたが吃音症の味方であるとわかるだけで、当事者は安心して話すことができます。
吃音症は、「本人の意思や能力とは関係なく、スムーズに言葉を発することができない」ということを、ご理解いただけますよう、よろしくお願い致します。
東京吃音改善研究所
畦地泰夫