重症度・検査

吃音(どもり)の検査方法と種類について徹底解説

吃音を持つ人は、症状が少なくて悩みが深い方もいれば、どもる回数は多いものの、そこまで気にしない人もいます。
また、吃音の症状に関しても、言葉を連発して発語する人や、言葉が出てこない(難発)方など、人によってどもり方は様々です。
多様などもりに対して、吃音の検査はどのように行うのでしょうか?
そこでこの記事では、捉えにくい吃音の「検査方法」についてわかりやすくお伝えします。自分の吃音は症状が多いのか、心理的な負担が多いのかを考えながらお読みいただくと良いと思います。検査は吃音を診ている機関に行かないと受けられませんが、概要についてご理解いただければ幸いです。

吃音の検査の種類

引用:CALMSモデル
吃音の症状は、どもってしまうことはもちろんですが、コミュニケーション自体に対しての不安や恐れなど、心理的なものがあります。症状が発症してしまうことに対しての心理(恥ずかしさや嫌悪感)も、吃音の一部と言えるでしょう。
そのため、これらの吃音の「症状」と「心理的な部分」を総合したものが、個人の「吃音問題」です。吃音を改善していくためには、個人の抱える吃音問題に対して評価を行っていくことが大切といえます。

症状に焦点を当てる検査


「観察可能な吃音の症状」に焦点を当てる検査には、「SSI(Stuttering Severity Instrument)」や「吃音検査法」などがあります。
SSIとは、吃音研究者である「Riley」によって作成された検査法です。
一方、吃音検査法とは、日本で作成された検査法です。
SSI、吃音検査法では、面接で文字を読んでもらったり、絵などの描写を説明したりして「吃音がどれくらい出ているか」の評価を行います。検査は、面接形式で行う場合と、話している場面を録画したものを見て行う場合があります。
例えば、対面で評価を行う場合に、面接者が「お名前を教えてください」と尋ねたとします。このとき、吃音当事者が回答する際に、どんな吃音の症状が出るのか、連発が何回出るのか、難発の持続時間はどれくらいか、などを見ていきます。
また、二次的行動と呼ばれる、吃音をごまかすための工夫があるかないかについても見ていくことが多いです。
例えば、吃音当事者が質問に答える時に、答えながら手を振れば、「随伴運動(反動をつけて言葉を出そうとする行為)が出ている」という評価をしていくということです。
これらの目に見える吃音症状の検査を行った後にセラピーを行い、検査の結果がどう変化していくかを見ていきます。
吃音が改善していくことにより、症状は減っていきます。
また、セラピーを行うセラピールームでは慣れていくことにより、吃音症状が減ることがよくあります。
たとえセラピールームで吃音症状が減ったとしても、日常生活で変わらないのであれば、これは改善とは言えません。当然のことながら、吃音とは日常で起こっているものが改善していくことを目指すべきです。

態度や感情に焦点を当てる検査


吃音に対する態度を評価していく検査は、「コミュニケーション態度検査(Communication Attitude Test)」や「改訂版エリクソン・コミュニケーション態度尺度(Modified Erickson Scale of Communication Attitude)」などがあります。
コミュニケーション態度検査とは、吃音研究者である「Brutten」と学生らが開発した検査法です。
一方、改訂版エリクソン・コミュニケーション態度尺度は、吃音研究者であるAndrews & Culterによって作られた検査法です。
これらの検査法は、吃音のある人がコミュニケーションをとる際、「どのように感じているか」などについて、それぞれの質問に答えていき、その回答を基に評価を行います。
このとき、質問項目では、人前での発表の苦手意識の有無や、話すことに対する姿勢や心配事についてなどを確認します。
例えば、「授業で音読をするのは簡単なことです」「話すのが好きです」「話し始めた時にすっかりと我を忘れてしまう」などの文章に対して、回答者は自分に当てはめて考え、「はい」または「いいえ」で回答していきます。
吃音症状は少なくても、心理的な問題を抱えている人は多いです。吃音の問題は、どもるという症状だけではなく、心理的な問題・生活の問題を全体的に解決することがとても大切です。
実際に、私も10代や20代の頃には、人前で話すことに対する不安や恐れを何度も抱えた経験があります。他人から見たらさほど症状が出ていなくても、本人はとても気になって不安を抱えていますし、生活する上で困っているのです。

包括を目指す評価法


吃音症状と吃音に対する感情・態度などを総合的に評価していく方法には、「CALMSモデル」や「ICFに基づく学齢期吃音の指導・支援プログラム」などがあります。
CALMSモデルとは、吃音研究者Healeyらによって作成されたものです。吃音を言語症状だけではなく、多面的に見て捉えていく評価方法です。
多面的に見るとは、「吃音をどのように捉えているのか」「どもる時にどんな感情を抱いているか」など、吃音に悩む人の心理や行動を様々な角度から見ていくということです。
また、CALMSとは、英語のCognitive(認知)、Affective(情緒)、Linguistic(言語)、Motor(運動能力)、Social(社交)の頭文字を取ったものです。具体的には、「吃音のことをどう捉えているのか?(認知)」「どんな感情を抱いて悩んでいるのか?(情緒)」など、認知・情緒・言語・運動能力・社交面の一つ一つの側面から吃音を見ていくのです。
一方、ICFに基づく学齢期吃音の指導・支援プログラムは金沢大学の小林教授によって作成されました。
またICFとは、世界保健機構(WHO)によって採択された「国際生活機能と障害、健康に関する分類(International Classification of Functioning,Disability,and Health;ICF)」の略です。
これらは、吃音の言語症状と共に、吃音についてどう捉えているのか、どんな感情を抱いているのかを検査していきます。また、学校の先生からの情報収集なども行います。
学齢期の吃音は、年齢的な面で周囲の子も未熟なため、からかいなどによって吃音の当事者である子供が傷つくことが多いです。
そのため、評価を行うことで、周囲ができることを改めて確認していき、吃音に悩む児童へのサポートをしていくことが大切です。

まとめ

吃音の検査とは、症状と心理的な部分を評価し、吃音を抱える当事者の「吃音問題」を捉えていきます。
ただし、ひとそれぞれに「吃音問題」は異なるため、やみくもに改善を考えずに、まずは自分の吃音問題を知ることが大切です。
吃音検査は、吃音治療を行っている機関で受けることができます。自分の課題が吃音のどの側面なのかを知り、吃音の改善に取り組んでいきましょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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