吃音の症状と種類 吃音の治し方・対処法

難発(無声)の吃音症状を克服していくために

吃音の難発症状によって、初対面の挨拶で自分の名前が言えなかったり、会社の社名が言えなかったりします。これにより、恥ずかしい思いをしたり、時には相手に誤解を与えてしまったりすることもあるでしょう。
そこでこの記事では吃音の難発症状について様々な角度から見ていき、どうやって克服していくかについて説明していきます。
症状を把握しておくだけでも、対処法が分かるようになります。当てはまるかどうかを確認していただきながら、適切な方法で克服していきましょう。

そもそも難発とは何か

よく「難発性吃音」という言葉を使われる方がいますが、そのような名称の吃音があるのではありません。正しくは「難発」という症状なのです。
吃音の症状には、言葉の出だしが連続して発してしまう「連発」、言葉の出だしを引き伸ばして発する「伸発」、言葉が発語できなくなる「難発」の3つの症状があります。難発は、その症状の中の一つということです。
また、難発症状は「ブロック」「ブロッキング」などと呼ばれることもあります。
難発が起きる時には、本来なら言葉を発するための声帯が「閉じている状態」、または声を出す声帯が「開いたまま固まっている状態」になります。頭の中で言いたい言葉は浮かんでいるのに、その言葉を発することができない状態になっているのです。

難発はこんな時は特に困る


話すときに難発症状が出て困るのは当然ですが、言いたい言葉を他の単語に言い換えることにより、その場をしのげることもあるでしょう。
いつでも言い換えができれば良いかもしれませんが、自分の名前や会社名などの「特定言葉」を言わなければいけない時は、言い換えができないため、困ります。
例えば、自己紹介の場面などで「はじめまして。……(無音)……(その後、無理やり言葉を発しようとして力む)……や……(無音)……や……やまかわと申します」
この時には、本人は非常に緊迫し、相手から見られている視線を強く感じながらパニックのような状態になります。
また、オフィスでの電話で会社名が言えない時には、以下のようになることもあります。
「お電話ありがとうございます。……(無音)」(自分)
「もしもし? もしもし?」(電話の相手)
「え、あ、すいません。……○○株式会社でございます」(自分)
このように、焦って応対せざるをえなくなります。

「オフィスにいる上司や同僚に聞かれてしまったのではないだろうか」という不安、「相手に変に思われてしまった」という恥ずかしさなど、心理的な影響も伴うことでしょう。
私も経験がありますが、子供の頃には、名前を言わなければいけない場面で言うことができずに「忘れました」と弁解を余儀なくされることもあるのです。そして、「なんで自分の名前を忘れるの?」などと、周囲の子から笑われたりしますが、これは本当に辛い経験です。

難発の症状は人それぞれ異なる

難発の症状が出ている人の中には、様々な人がいます。
たとえば「幼少期に発症した吃音が続いている人」や、「普段はほとんどどもらなくなったけど電話だけどもる人」など様々な人がいます。また、ストレスなどからくる「心因性の吃音」のため、突然名前などが言えなくなってしまった人もいるでしょう。
同じ難発の症状といっても、パターン化している吃音が日常会話では軽減するケースは多々あります。
ただ、特定場面だけでどもることもあれば、その他の心因性の要因で起きている場合もあり、人によって様々なのです。

難発をどうやって克服していくのか


結論から言えば、「方法論」ではなく、当事者の状態に合わせて克服を行っていくべきでしょう。言語トレーニングで症状が軽減できる場合もあれば、心因的なストレスを除いた方が良い場合もあります。
電話などの特殊な状況に取り組むこと以前に、普段の会話から楽に話せるように実践した方が良い場合もあるでしょう。直接的なアプローチで行う場合には、ストレスの低い場面から高い場面へと段階的に行うことが大事です。
テクニック的なことを行っても、その場になるとパニックが起きてしまい、テクニックが使えなくなることはよくあります。その場合には克服するための技よりも、吃音が出てしまう恐怖や不安に向かう意識が強いのです。

自分がどのような状態かによって、改善への取り組みで実施するべきことは違ってきます。治療を行っている専門家に相談することが一番の近道かもしれません。
また、当然ですが、言語トレーニングだけが吃音の改善方法ではありません。間接法といって言語トレーニングを行わない方法、その他の心理療法で克服できるケースもあります。
まずは自分に合うことを、小さなことから始めてみて、少しずつ改善していくことをおススメします。わからなくなったら、治療を行っている専門家に相談してみましょう。

難発をカミングアウトする有効性

吃音を一人で抱えてしまい、苦しい思いをされている方は、時に吃音をカミングアウトすることが有効なこともあります。もちろん「恥ずかしくて言えない」という場合、無理に言わなくても良いです。
ただ、周りの人に知ってもらうことで、「どもっても理解してもらえる」という安心感が吃音を和らげることがあります。
いずれにしても、一人で悩まずに、専門家に相談したり、可能な範囲で友人や家族に悩みを聞いてもらったりしてください。あなたの気持ちを楽にすることが一番大切です。

まとめ

難発とは、吃音症状の一つで、言いたい言葉が頭では浮かんでいるのに、言葉を発することができなくなる症状のことです。改善の方法は人によって違うため、あなたに合った取り組みを行うことが良いでしょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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