吃音をテーマにした映画「英国王のスピーチ」をご存知でしょうか?この映画は、実在した英国王ジョージ6世のことを描いた映画であり、ジョージ6世は吃音があったことで知られています。
日常で接する機会がないと、海外の人がどもるところをあまり見たことがない方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、私たち日本人以外の海外の人たちの吃音で悩む実情についてお伝えしていきます。
もくじ
世界中どの国にも吃音はあるのか?
吃音の発症の割合について、人口の5%の人が吃音症を発症するといわれています。5%のうち発症後に治っていく人はいますが、この数値に当てはめると人生で一度は吃音を経験することがたくさんいることがわかります。
なんと、世界の人口72億人に対して、3.6億人が吃音を人生で一度でも経験するということです。
最近の各国の調査によると、吃音を一生に一度でも経験する割合を示したデータでは、デンマークは17.7%、イギリスでも8.4%となっており、よく引用される5%より多いことが明らかです。
これらのデータによって、吃音経験は文化によって差があるという可能性があるといえますし、文化差があることを指摘する研究者もいます。
また、吃音を発症し、回復しないまま現在も吃音がある人は、人口の0.7~1%です。少なくとも世界に5,400万人の人が吃音を持っていることになります。
各国の有名人に見る吃音
世界中に吃音があることは有名人を見てもわかります。たとえば、日本では吃音がある有名人といえば、アナウンサーの小倉智昭さんや女優の木の実ナナさんがいます。
アメリカではハリウッド俳優のブルースウィルスさんやバイデン元副大統領も有名です。
イギリスではグラミー賞を受賞しているエド・シーラン、人気ロックバンドオアシスのメンバーであるノエル・ギャラガーも吃音があります。
さらに他の国においても、コロンビアのサッカー選手ロドリゲス、スコットランドのラグビー選手ケリー・ブラウンなどスポーツ選手にも吃音をもつ有名人がいます。
各国の吃音への取り組み
当然ですが、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アフリカ、中国をはじめとしてアジア諸国でも吃音矯正の取り組みは行われています。また、多くの国々で吃音を持つ人たちの団体(当事者団体)が存在しています。
また、世界において治療方法も様々ありますが、「これを行えば吃音は治る」という「完全な方法」は世界中どこにも存在しません。様々な方法の中から良いものを選択し、当事者に合わせて行うのが良いと考えられています。
海外の吃音の人たちとの交流を通じて感じた事
海外の吃音事情について、私の個人的な経験をお伝えします。それは、アメリカでの吃音のグループセラピーにゲストとして参加させていただいた時の話です。
その日、セラピールームには20代から30代の吃音を抱える男女が数名いらっしゃいました。部屋の中では、どもる体験を通じて「困っていること」についてお互いが意見交換をしていました。
大まかにお伝えすると、以下のような意見が出ていました。
「吃音がある自分を、周囲の人はどのように思っているのか」
「周囲に吃音をわかってもらえない」
「仕事を変えようと思っていても、吃音があるから就活のための面接に行くのにためらってしまう。どうすれば良いか」
この記事を読まれている方の中にも、同じような悩みを抱えていらっしゃる方がいるのではないでしょうか?
これらの悩みは、国を超えて日本でも同じです。アジア諸国の吃音を持つ方々とも話したこともありますが、もちろんアメリカ以外の国でも文化は違えど、コミュニケーションを行う際に「吃音ゆえの悩み」共通しているように感じました。
また、世界には様々な国の事情などもあり、国内で内戦が行われているような状況で吃音になる人や、生活もままならない貧困を抱えながら吃音になる人など、吃音になる経緯も様々であることを同時に知りました。
まとめ
吃音症で悩む人は世界各国で同じようにいます。コミュニケーションを行う上での同じような悩みを抱えながら、一生懸命に頑張っているのです。どこの国でも吃音への正しい認知と理解が必要であり、吃音を持つ人が楽に生活できるよう更なる取り組みが求められています。