吃音がある人の多くは、大勢の人の前でスピーチをすることが苦手です。特に結婚式など、形式張った場面では緊張も増すため、何ヶ月も前から不安を抱えている人もいます。
結婚式でのスピーチには、新郎または新婦が自分の結婚式でスピーチをしなければいけない場合と、親族や友人・知人という参加者としての立場でスピーチする場合があります。
この記事では主役または参加者として吃音に悩む人のために、吃音がある人がいかに結婚式のスピーチを乗り越えるかについてお伝えします。
もくじ
新郎または新婦が吃音で悩んでいる場合
(写真はイメージです 以下、同)
新郎または新婦が吃音で悩んでいる場合には、以下のようなことで悩むことが多いです。
誓いの言葉が言えるか心配
人前式では、「本日、私たちは、ご列席くださった皆様の前で結婚式を挙げます。これから、どんな時にも心をひとつにして、・・・・」のような誓いの言葉を読み上げます。このように決まった言葉を読むことが苦手な人にとっては、参列者がいる前でどもらずに読めるのかどうかが不安になります。
ウェルカムスピーチが言えるか心配
基本的には新郎が行いますが、招待した方々に対して「本日はお忙しいところ、わたくしたちのために集まっていただき、・・・」のような挨拶をします。たくさんの招待客を目の前にし、自分が注目されている中でどもらずに言えるかの心配を抱えています。
両親への手紙がちゃんと読めるか心配
基本的には両親への手紙は、新婦が読みます。「お父さん、お母さんへ。今まで25年間、本当にお世話になりました。・・・・」のような両親への感謝をつづった手紙を読むときに、吃音のある新婦にとっては、大事な場面でどもらずに読めるかが心配になります。
親・親族、友人、会社関係者として出席する場合
吃音のある人が新郎新婦ではなく招待客として結婚式に出席する場合には、新郎新婦との信頼関係もあるため断ることもできず人知れず不安を抱えることがあります。
親としてスピーチをしなくてはいけなくて困っている
あなたが親としてスピーチをしなくてはいけない場合、やはり参列者から「主役の親」という見方をされるため、その責任を強く感じていらっしゃるかもしれません。
参列者の前で、しかるべき姿であるために緊張が高まる瞬間です。
友人、会社関係の参加者としてのスピーチで困っている
友人としてスピーチをする場合には、他の参列者には自分より年齢や社会的地位が高い人も多く、評価されるプレッシャーを感じるかもしれません。
また、先輩や上司としてスピーチをする場合には新郎新婦より上の立場として見られるため、スマートな大人の姿を示さないといけないというプレッシャーを感じられることでしょう。
スピーチをしたことがある人の経験談 高本さん(仮名) 38歳
【高本さんの吃音について】
高本さんは、幼少期から吃音があり、学生時代は言葉を言い換えたりしながらなんとか吃音と付き合ってきました。
社会人になってから苦労することもありましたが、職場の人の多くは理解があり仕事上はなんとか過ごせていました。
冗談でいじられることはありましたが笑ってごまかしたりしていて、内心は吃音に対する恐れを抱えることもありました。
吃音のある人が結婚式を挙げた経験談 優奈さん(仮名) 25歳
結婚式を終えた新婦さんにお話を伺いました。
優奈さんは、幼少期から吃音がありましたが、症状が目立っていた時期とそうでない時期がありました。
しかし、社会人になられてからは吃音に悩むことが多くなり、仕事でも時々支障が出ていました。
お仕事では吃音を工夫しなんとか頑張ってきましたが、人生で一度の大切な結婚式を迎えるにあたり、「結婚式で親への手紙を読みたいけど、どもったらどうしよう・・・」とつらい気持ちになり、悩んでいらっしゃいました。
優奈さんはこのことを機に、吃音の改善に取り組まれました。今回セッションを受講途中(完全に吃音を改善する前の段階)で結婚式を迎えられた優奈さんに結婚式前後のお話を伺いました。
セッションの取り組みは良くなるかどうか半信半疑でしたが、続け
精神的な不安が劇的に改善されて、毎日が楽しくなっていつの間に
手紙はゆっくり話すように心がけて当日の事を想像しながら何十回
後は、今まで頑張って準備してきたし楽しもうという気持ちでした
式が始まってから色々段取りがありバタバタしているのとテンショ
気持ちがハイに
吃音で結婚式をやるか悩んでたのが嘘のようでした。
優奈さんの場合は、こちらで吃音改善のセッションを受講されたので、この記事をご覧になられている方と同じ条件ではありません。
そのため、対策が知りたいと考えていらっしゃる方に向けて、簡易的ではありますが記事の下の方にいくつか対策を書きましたのでご参照ください。
結婚式での吃音の改善策・対策を知りたい
新郎新婦
新郎新婦の場合には、プランナーに相談することも大事
あなたが新郎または新婦としてスピーチをするとしたら、その緊張はとても大きなものでしょう。一生に一度の大事な場面で、そのような不安はできるだけなくしたいものです。
新郎新婦の場合には、まず結論からお伝えすると、あらかじめ結婚式場のプランナーに相談するべきです。なぜなら、新郎新婦にとって結婚式というものは、自分達が主役であり中心の場であるからです。
当たり前ですが、結婚式は式場に費用を支払って行います。本来、祝福の場として喜びに溢れたものであり、話すことも含め不安に悩まされる必要などないのです。
また、新郎新婦の心配事に対して配慮するのがプランナーの仕事です。
とはいえ、プランナーに話すことにも抵抗があるかもしれません。無理をする必要はありませんが、本来あなたが悩む必要のない場であることを再認識していただければと思います。
新婦が母親への手紙を読み上げたり、新郎が結びの言葉を話す場面などが不安な人もいるかもしれません。もし、工夫できるようであれば、それらの行動の代わりになるような演出を考えてみるのも良いでしょう。
たとえば、新郎新婦が二人で一緒に誓いの手紙を読み上げるような演出です。斉唱といって、誰かと一緒に読む場合には吃音症状はほとんど出なくなります。
いずれにしても、楽にできることと、できないことを分けて考え、一生に一度の最高の結婚式を作ってください。
誓いの言葉
上記にも触れましたが、新郎新婦が一緒に読んでも不自然でない内容については、一緒に読むことをお勧めします。
斉唱は吃音がほとんど出なくなりますし、間違えても相手がフォローしてくれます。また、一緒に読むことで、お互いが夫婦生活を協力して行なっていく姿勢を表現していると考えてください。
ウェルカムスピーチ
新郎が招待客に対して行う際に、一斉に注目を浴びるため緊張が高まる場面です。
この際に、音楽や映像を効果的に使うような演出をしてみてはいかがでしょうか?例えば、プレゼンテーションのように、スクリーンに「本日はお忙しいとろ私たちのためにお越しいただきありがとうございます」のような挨拶文を映し出し、一言アドリブでコメントを添えるのです。
お辞儀をし、言いやすい表現でアドリブで話すようにすることで、苦手な言葉へのこだわりを半減させていくというやり方です。
両親への手紙
この場面は新婦にとってとても大切な場面で手紙を読むのは一般的ですが、最近では吃音の有る無しに関わらず、手紙を読まない人もいます。
新婦にとって、そもそも手紙は読まなくてはいけないのでしょうか?
手紙を読むことは親に感謝を伝えるためですが、読むことが苦手な場合には他の感謝の伝え方に変えることもできます。
例えば、花束と記念品を渡すことや、手紙を後で読むように渡すという手段もあります。また、司会者から「泣いてしまうので、後で読んでほしいということです」と伝えてもらい、その場では読まないようにするという手もあります。
他には、過去のアルバムから作成したオリジナル映像を流してから手紙を渡すという演出をすることも良いです。大事なことは感謝を伝えることなので、手紙を読む行為にこだわる必要はないのではないでしょうか?
参列者編
スピーチを頼まれたが、受けるべきか断るべきか?
まず、断る場合にしてもせっかく頼まれたスピーチを断る正当な理由が見つかりません。式に参加し新郎新婦を祝福する側にいる人がスピーチを断ったら、失礼になるのではないかと考えてしまいますよね?
親しい友人ならば「私、そういうの苦手なの、ごめんね」と断れる人もいますが、吃音のある人は相手からの申し出を断ること自体に抵抗を感じる人もいます。
どうしてもできないならば、丁寧に理由を説明しお断りしても良いですし、歌や余興などの他のことで祝福させてほしいと相手に提案するのも良いかもしれません。
二次会の司会を頼まれたが受けるべきか断るべきか?
吃音を上手に隠しながら普段なんとか日常会話ができていると、そこまで吃音で悩んでいないと思われがちです。そのため、吃音があっても司会を頼まれることがあります。
司会はスピーチとは異なり、ずっと話さないといけません。盛り上げながら楽しくやれるのであれば問題ありませんが、どうしても不安な場合には他の適任者に当たってもらうようにお断りするのも選択肢の一つです。
あなたを適任者だと考え司会を依頼されたとしても、当事者であるあなたが司会を苦手として困っていることを伝えれば新郎新婦側も理解してくれるはずです。
吃音のことは言わずに、「苦手なので今回は他の人にお願いしてほしい」と伝えても良いのです。
スピーチの心構え
この記事を読まれている方は、スピーチの内容よりも吃音の方に意識が向いていることでしょう。ここで、そもそもスピーチの内容やその場の環境のことを見直してみるのも良いです。
内容はまとまっているか?
「話す内容がまとまっていないことによる迷い」があるなら、その迷いを明確にしましょう。自分は何が言いたいのかを最優先し、目的をしっかりと持ち、評価ばかりに気をとられないようにしていきたいものです。
人は、他者からの評価などコントロールできないものに対して不安になります。「自分がどう在るか」というコントロールできることに目を向けていくことが大事です。スピーチを評価されることや、「相手を喜ばせなければいけない」という呪縛を手放してください。
相手はあなたの敵ではない
吃音があるために話すとき極度に緊張してしまう場合、まるで勝つか負けるかという闘争本能が働いているような状態になっていることが多いです。
人間は危機的な状況に陥ると闘争本能または逃走本能が働き、身体の働きが戦闘モードになります。
そもそも参列者は、あなたの敵ではありません。聴衆と仲間意識を持つことも大事です。できるならば、他の人のスピーチを応援したり、参加者とできるだけ心を開いて話すように心がけましょう。
簡単なスピーチテクニック
軟起声
図のように、言葉の出だしをやさしく発する方法を、軟起声と言います。非常に簡易的な方法ではありますが、言葉の出だしを少しやさしく発することで、言葉の出だしが出やすくなることがあります。
もちろん本格的に発声のトレーニングを受けることと比べると、軟起声の効果がある人は少ないです。もし、この方法があなたに合うのであれば使ってみてください。
軟起声のやり方は、動画でも解説していますので、興味のある方は、ご覧になってください。
ゆっくり話す
吃音があることによって緊張してしまって、思うようにゆっくり話せないことがあります。最初の一文字目が全く出ない場合には、ゆっくり話すことの効果はほとんどないと言えます。
しかし、普段から早口傾向の人は、ゆっくり話すことで話しやすくなることがあります。最初から最後まで自分独自のペースを保ち、ゆっくり話す練習をしましょう。
ゆっくり話す練習をする際には、自分の話している様子を録画して自分の話す速度を確認してみてください。
ボディランゲージを使って話す
ボディランゲージを使い体を動かすことで緊張を緩めます。人は緊張すると体が硬くなるため、少し動きながら話すことで緊張度合いが下がります。
スピーチをする会場では、始まる前にできるだけ会場内を歩くことも良いです。緊張するあまり自分の動きが縮こまってしまうよりも、始まる前に会場全体を歩いたり、できるだけ多くの参加者と挨拶などを交わしておくのです。
こういった行動がまるで敵地にいるような緊張感覚を和らげ、自分の気持ちを少し楽にさせることにつながるのです。
吃音を軽くカミングアウトしてしまう
「私は緊張すると、時々つまることがありますが、気にしないでいただけば嬉しいです」という具合に、カミングアウトすることで、気持ちが楽になる場合があります。状況にもよりますが、カミングアウトは、見ている側に爽やかな印象を与えることもできます。
吃音という言葉を使わずに、話すのが苦手だと正直に伝えることで十分です。固定観念にとらわれず、あなたらしく話せば良いのです。
吃音の人のことをみんなはどう思っているのか?
吃音がない人にとっては、以下のように見えることが多いです。
焦っている
言葉に詰まっている
緊張している
人前で話すのが苦手
症状がたくさん出る人は、「この人はどもりがあるのだな」と認知されます。しかし、吃音がない人にとっては、「人前のスピーチでは緊張して言葉が詰まったりする人もいる」と軽く考える人も多いのです。
吃音がある人にとっては、「どもる=恥、どもる人=変な人」のように否定的な認知を持ちがちです。もちろん症状にもよりますが、吃音当事者が思っているよりも他の人は吃音のことをそこまで否定的に考えていないこともよくあります。
そこそも、吃音は治せるのか?
中学生以上の吃音(成人吃音)は何も取り組みを行わない場合には軽くなることはあっても自然に治ることはほとんどありません。
しかし、適切な取り組みを行うことで改善または治癒の段階まで回復されることがあります。しかし、ある程度の時間も必要ですので、計画的に行っていかれた方が良いでしょう。
結婚式でのスピーチの悩み、ご相談ください
この記事を読まれても問題が解決しない場合や、吃音を本格的に改善したい場合には、吃音で困るような出来事を乗り越えることを一つのきっかけと捉え、吃音の改善に取り組むことも良いかもしれません。
この記事を読まれても結婚式の不安を抱えていらっしゃる方、吃音の改善を希望される方は、体験セッションにてご相談を承っています。
体験セッション・吃音改善セッションについては、こちらをご覧ください。
まとめ
結婚式のスピーチでの吃音に悩む時には、できる範囲で対処していくことが大事です。また、話すときには自分にとって楽なゴールを設定し、軽くどもること許したりボディランゲージを使うことも良いです。
カミングアウトができるなら、した方が気分が楽になることがあります。話す内容がまとまっているかも確認しましょう。必要であれば、改善・治療に取り組むのも良いです。