吃音があることにより就活の面接で悩む人はたくさんいます。
そのため吃音がある多くの人は「吃音があっても就職できるのか?
しかし、吃音があっても実際に就活に成功している人もいます。
そのような人たちは就活が決まるまで様々な対策を行い、
また、就活を機に吃音を少しでも改善しようとする人もいます。その場合は、就労後にも悩むことが多い吃音を今のタイミングで改善させようと決めて取り組むのです。
この記事では、
もくじ
吃音が就活に与える影響
吃音は就活で不利になるのか?
就活で不利になるかは、後にも述べますが、あなたの吃音の症状、受けようとする会社、面接の担当者などによって異なります。
確かに、用意していた答えが言えないことがあると面接では不利になります。そのため、場合によっては事前に吃音があることをカミングアウトした方が良いです。
面接でどもったら印象が悪くなると考える人がいますが、一概には言えません。その会社の求めている人材像と照らし合わせてみないとわからないのです。
その会社は、どのような人材を求めているのか?
応募する会社の求める能力をあなたが持っているならば、吃音があっても就職することができることがあります。そのため、あなたのどのような能力を会社に提供することができるかについて考えることが大事です。
冷静に考えてみてください。世の中には、吃音があっても仕事をしている人がたくさんいます。
確かに入社後に吃音で困ることもありますが、吃音があっても仕事をしているのです。
受けようとしている会社が、どのような人材を求めていて、自分がその人材であれば、内定を勝ち取れる可能性は十分にあります。
吃音のことにとらわれるあまり、自分が受けようとしている会社をしっかり分析することが不足している人もいます。分析が不足している時は、まずはしっかりとその会社の分析をしてください。
あなたにはどのような能力があるのか?
会社が求めている能力は、単に「どもらないこと」ではありません。
多くはその職業に対する能力が必要なのです。IT業界ならITのスキル、介護業界ならホスピタリティや資格などが求められます。
仕事上での挨拶やコミュニケーションで、どもってしまうことを考えると、「自分には基本的なスキルが足りていない」と考える人もいますが、それは、飛躍した考え方かもしれません。
吃音と仕事の関係は、個人の症状と環境によります。実際に仕事をしてみるとわかりますが、吃音があっても仕事上の業務を行うことは可能な場合が多いのです。
あなたの吃音が相手にどのような印象を与えているのか?
個人差があるため、一概には言えませんが、あなたが思うほど相手に変な印象は与えていない場合もあります。
吃音のことをよく知らない人は、どもっている姿を見たときに、「焦っているのではないか」「緊張しているのではないか」「言葉が詰まりやすい人なのではないか」など、自分の経験に基づき判断しています。
そのため、あなたが思っているほどの悪い印象を与えていないこともあります。
また、吃音には二次的行動と呼ばれる吃音特有の行動があります。
例えば、言葉を言い換えたり、目的の言葉の前に他の言葉を挿入することなどが挙げられます。
他にも、随伴(ずいはん)運動といって顔を歪めながらどもる場合や、体に反動をつけながらどもる場合があります。
吃音のない人から見たら、場合によっては、言葉がつっかえることよりも、二次的行動や随伴運動が印象に残ります。
そのため、たとえどもったとしても、相手に誤解を与えないことを心がけていきましょう。
※二次的行動や随伴運動は訓練によって改善させることができます。
吃音があっても就職できるのか?
吃音があっても就職している人はたくさんいますが、
例えば、
吃音で困ってる人の中には、
どうしても成果を出せない場合には、
「吃音=就職できない」ではなく、
なりたい職業になれるのか?
実際に私がこれまでお会いした人たちの中には、吃音があっても、以下の仕事をしいらっしゃる方がいました。
弁護士、医師、パイロット、警察官、プロミュージシャン、会社員、市役所窓口、営業職、SE、プログラマー、現場監督、介護職、事務職、税理士、自衛官、美容師、エステティシャン、飲食店店員、会社経営など。
こうして見てみると、ほとんどの仕事は、吃音があっても就いている人がいるとも言えます。
情報番組「とくダネ!」の司会者である小倉智昭さんは、吃音であることを隠しながらアナウンサーになりました。
吃音があってもアナウンサーになれると聞くと「すごいなあ」と思いますよね。小倉さんは仕事をしながら吃音を乗り越えていったそうです。
しかし、誰もが小倉さんと同じようになれるわけではありません。また、
仕事選びは吃音のことだけではなく、
仕事を選ぶポイントは、吃音があるからといって先に職業を選んでしまうより、なりたい職業があるならば実際に現場の声を確認することが大事です。
例えば、
実際には、上手に吃音を工夫できたりすることもあり、あなたが思っているほど吃音に困らないかもしれません。最初からあきらめるのではなくしっかりと調べてみることから始めましょう。
受け入れてくれる企業はあるのか?
吃音があっても、実際に受け入れてくれる企業はたくさんあります。また、就職してから吃音に悩み上司に相談したところ、「吃音があっても大丈夫だよ」と言ってもらえた人もいます。
採用されてからカミングアウトをする人もいますが、誤解を防ぐためにできるだけ早い段階で吃音のことを伝えた方が良いかもしれません。
吃音のある人はどんな職業についているのか?
吃音で悩む人は、製造業など人と話す機会の少ない職業を選ぶのではないかと考える人もいます。しかし、実際には、営業や事務などコミュニケーションを取る仕事で働いている人は多いです。
専門職・技術職の割合は比較的高い傾向にありますが、公務員や営業職、事務や経理で働く人もたくさんいます。
この記事を書いている私は、これまで吃音のある人たち1,000人以上と直接会って吃音についてじっくりと話し合ってきましたが、本当に様々な職種の方がたくさんいることを実感しています。
仕事をしているときに優位性を保てる職業は、比較的働きやすい傾向にあります。そういった意味では専門職・技術職は、吃音というリスクに対して備えるには良いと言えます。
専門職・技術職は、税理士、弁護士、臨床検査技師、栄養士、司法書士、保育士、介護士、塾講師、電気工事士、建築設計士、などたくさんの領域の職業があります。
もちろん専門職でなくても、求められること以上の働きをすればどのような仕事をしていても優位性は高まりますし、必要とされる人材になることができます。
吃音だけにとらわれてはいけない
吃音が就活の面接でどのように影響するかは、個人差もあるため状況に応じて考えていかなければなりません。
例えば、以下のことについても個人差があります。
・日常会話ではどのくらい話せるのか
・面接の時に吃音の症状がどのくらい出てしまうのか
・自分の持っている能力や資格はどのようなものがあるのか
・どのような職業に就くのか
・どのような会社を受けるのか
これらの条件によっては、吃音があっても就活に支障がない場合があります。
また、面接で名前でどもったら面接に不利だと考える人が多いですが、実際にはそこまで不利にならないこともあります。
例えば、日常会話では吃音の症状がさほど出ていなくとも、面接の場面で名前が言えない人がいます。面接は、とても緊張する場面のため、その緊張感が体を硬くさせ、吃音を増やしているとも言えます。
面接官が見ているところは、吃音だけではありません。あなたが会社でどれくらい活躍される可能性があるのかを見ているのです。
吃音の症状や程度は一人一人異なりますから一概には言えませんが、「面接でどもったけど、内定をもらった」という人もたくさんいます。
エージェントの代表にインタビュー
吃音と就活について、東京吃音改善研究所の畦地が、株式会社ハートセッションの代表・柘植社長にインタビューさせていただきました。
柘植社長は、元リクルートで現在は東京都国分寺市で就労支援事業を行っていらっしゃいます。
不利になるかどうかはケースバイケースだということです。
できるならカミングアウトはした方が良いです。採用が決まってから吃音のことで悩まないためにも。
カミングアウトをされる際には、変に誤解されないように伝え方にも工夫が必要ですよね。
面接は非常にプレッシャーのかかる場面ですから、多くの人は話しづらくなります。また、普段はそこまで吃音が出ないのであれば、そのことをきちんと伝えた方が良いです。
人にもよるかと思いますが、あえて病気や障害のように伝える必要はないのではないでしょうか?
当たり前ですが、企業は就活生に吃音があるかどうかよりも、その人がどうやって会社に貢献して成長してくれるのかを見ています。
多少吃音があっても必要とされる力を持っている人を企業は求めています。
もし、吃音がネックになってその会社が不採用となったならば、縁がなかったと考えて自分に縁のある会社に就職できることを目指すべきです。
基本的にはどこの企業も若い人を求めています。合わない会社もあると考えて、自分に合った会社に巡り合えることが一番大事なことですよね。
志望動機と自分の強みを担当者に伝えられるように、テンプレートの言葉ではなく自分の言葉で伝えるべきです。
ともかく、企業はその人が「どれだけやる気を持って面接に来ているのか」を見ています。
企業は「マストとウォント」という採用条件の基準を持っています。マストは「これだけは必要だという条件」、ウォントは、「このようなことがあれば良いという条件」です。
実は、吃音はマストにもウォントにも入っていません。そもそも採用基準には吃音のことなど書いてないです。
確かに吃音が出てしまって難しい時もあるかと思います。先ほども言いましたが、そういう時にはその会社が自分には縁がなかったと思って対策を立て直して次の面接に挑戦していかれるのが良いと思います。
就活を乗り越えた人たちにインタビュー
就活を乗り越えた方は、面接にどのように臨まれたのでしょうか?東京吃音改善研究所を受講されていらっしゃる就活を乗り越えられた4名の方にインタビューを行いました。
佐久間さん(仮名) 建設会社経理課勤務 20代 男性
※佐久間さんは、就職されてから吃音改善セッションの受講を開始されました。
棚橋さん(仮名) IT関連会社勤務 20代 男性
※棚橋さんは、就活の前から吃音の改善セッションを受講し準備をされていました。
中野さん(仮名) 税理士事務所勤務 20代 女性
※中野さんは、就活の前から吃音の改善セッションを受講し準備をされていました。
大石さん(仮名) 教員 30代 男性
※大石さんは、就職されてから吃音改善セッションの受講を開始されました。
就活(面接、電話、緊張)への対策
吃音が出ないような話し方はあるのか?
吃音を出にくくするための話し方はあります。
しかし、吃音の対策を直前に行うことはあまりオススメしません。吃音が出ないようにしないといけないというプレッシャーが高まり、余計にどもってしまうことがあるからです。
そのため、対策を行うとしたらできるだけ早めに行った方が良いです。直前だと余計に焦ってしまうため、就活に臨む前からだんだんと練習していくことが大事です。
本来の吃音矯正のための言語トレーニングは、個人に合わせて行う段階的な訓練が必要なため、テンプレートのように解説できるものではありません。
そのため、ここではあなたが自分で行える簡易的な対策をご紹介します。あくまで簡易的あることをご理解ください。
ゆっくり話す
早口傾向の人は、ゆっくり話すことで話しやすくなることがあります。しかし、緊張してしまって、思うようにゆっくり話せないことがあります。
大事なことは、相手のペースに合わせないようにして話すことです。自分独自のペースを保ち、ゆっくり話す練習をしましょう。
自分の話している様子を録画して、自分の話す速度を確認してみてください。確認してみると、自分が思っているより早く話していることに気づくかもしれません。
軽くボディランゲージを使う
体を動かした方が、多少緊張もほぐれるため、軽くボディランゲージを使って話すことが時には有効です。
大げさにならないように、録画して確認してみましょう。
やさしく声を発する
図のように、言葉の出だしをやさしく発する方法を、軟起声と言います。
軟起声のやり方は、動画でも解説していますので、興味のある方は、ご覧になってください。
面接担当者に吃音のことをどうやって伝えるべきか?
上記にも述べましたが、カミングアウトはした方が良い傾向にあります。以下、カミングアウトをするときのポイントについてお伝えします。
具体的な吃音の状態を伝える
当たり前ですが、相手は、あなたのことを知らないため、あなたの吃音がどんな状態なのかを理解することができません。
あなたが勇気をふりしぼって、「吃音があります」とカミングアウトしても、相手には正しく伝わらないのです。
そのため、あなたがどう言う場面で、どれくらいどもるのかなどを伝える必要があります。
自己紹介をする際の言い方
面接担当者から「自己紹介をお願いします」と言われたら・・・
吃音があることを伝えるためには、以下のような言い方をすると良いです。
(名前を言う前に)「最初にお伝えしたいのですが、私は吃音があり話す時に言葉が詰まることがあります。言葉が不明瞭なときは、お尋ねいただけましたら言い直しますので、よろしくお願い致します。」と付け加え、「〇〇と申します。(自由回答)・・・・・・・・」
(名前を言う前に)「最初にお伝えしたいのですが、私は緊張する場面で、話す時に言葉が詰まることがあります。言葉が不明瞭なときは、お尋ねいただけましたら言い直しますので、よろしくお願い致します。」と付け加える
「〇〇と申します。△△大学で□□を学んでおります。(自由回答)・・・・・・・・」
「吃音があり」と「緊張する場面で言葉が詰まることがあり」は、あなたの判断で使い分けてください。
自由回答の際には、お決まりの内容だけではなく、PRをしっかりできるように考えましょう。
「ちゃんと言わないといけない」と考えてしまい、言葉に注目が向くと話しづらくなります。あなたの話したい内容に、あなたの気持ちがこもっている方が吃音が出にくくなることが多いです。
吃音の症状があることを具体的に伝える例
「私は、日常会話ではそこまで言葉につまる症状は出ないのですが、面接のような場面では緊張も重なって症状が強くなることがあります。そのため、〇〇のような業務は問題なく行うことができますが、〇〇のような場面では、言葉が詰まってしまうことがあります。」
「私は吃音があっても普段は電話対応などはできるのですが、時々自分の名前をいう時に言葉が詰まってしまうことがあります。それ以外の時は話しやすくなりますので、この点をご理解いただけましたら幸いです」
履歴書に書いておく
あらかじめ履歴書またはエントリーシートの自己アピールや志望動機に交えて書く方法があります。自分は吃音があってどのように頑張ってきたかを、以下のアピールポイントとして書いてみましょう。
自分のアピールポイントとして使う場合
アピールポイントとして使う場合は、以下のような視点で考えてみましょう。
・吃音を抱えながら頑張ってきたこと(自分なりに工夫して授業の発表をした等)
・吃音を克服するために挑戦したこと(バイトや部活等)
・吃音があるから、困っている人の気持ちがわかるということ
吃音があることをネガティブな側面として書くのではなく、吃音があるからこそ何を経験してきたのかを考えてみましょう。
カミングアウトをしなくても良い時もある
上記に「カミングアウトした方が良い」と書いておきながら、矛盾するかもしれませんが、カミングアウトをしない方が良い場合もあります。
そこまで多く症状は出ない人であれば、あえて言う必要はありません。あまり重く考えずに、自分が苦手なことを言う際に「緊張すると言葉が出にくくなることがあるんです」程度で良いです。
吃音という言葉を使うべきか?
吃音という言葉は、時には病名のように聞こえます。面接官に深刻な印象を与えないように、以下のような表現を使うことも良いです。
私は、話すのが上手ではありません
私は、緊張する場面で話すのが得意でありません
私は、時々、言葉がつっかえることがあります
吃音悩む人は、「私は吃音者だからコミュニケーション能力が低い」と考えがちです。しかし、もっと大きな視点からあなたのことを見たときに、吃音は「単に苦手なことが一つあるというだけ」とも言えます。
吃音以外の課題や問題がないのであれば、あなたは健康で頭脳も明晰であり、「苦手なことが一つあるだけ」と考えるべきです。
あなたは、これまで人と同じようにまたはそれ以上に一生懸命頑張ってきたのですから、場合によってはそこまで深く考える必要はないのかもしれません。
就活の面接の時にどもってしまうのをどうすればいいか?
何らかのテクニックを用いて、症状を抑えられるならそれに越したことはありません。しかし、面接のような緊張を伴う場面で、そのようなことが簡単にできるかというと、そうではありません。
そのため、どもらない状態を目指すのではなく、できるだけ吃音を軽く抑えることを考えましょう。軽くすませる一つの方法に「引き伸ばし法」があります。
最初の言葉を引き伸ばしながら発する方法です。
例えば、「◯◯大学の、やー、やーまもとです。」のように、最初の言葉を引き延ばす方法です。
テクニックを使って吃音を減らそうとするよりは、あえて軽くどもるようにした方が、結果的にリスクが下がります。
このようなやり方をするときには、面接官に不自然な印象を与えないように気をつけてください。
文字を引き伸ばすことに抵抗のある人は、バスケットボールでボールを大きくドリブルするように言葉をバウンドさせて言うと良いです。
引き伸ばしは第一音を真っ直ぐ引き伸ばす線のイメージ、バウンドは弧を描くイメージです。
ただし、どもりたくないという考えがあると、余計にどもってしまうので、気をつけてください。スムーズに使えるようになるには練習が必要です。
どもった時にどうやって気持ちを切り替えるか?
どもってしまうと、「ああ、今どもってしまった。変に思われた」と考えてしまう人がいます。
どもったことに意識をすると、そのあとの会話にも影響し、余計にどもることが増えてしまいます。
そのため、どもってしまっても、そのあとの会話の「中身」に集中していくことが大事です。
「覆水盆に返らず」(こぼれた水は戻らない、起きてしまったことは元には戻らないという意味)ということわざがあります。
どもってしまったのなら、それは元には戻らないため、良い意味で流していくことが大事です。
そして、自分は緊張しているということを、なるべく受け入れていくようにしましょう。
よく見せようとする人は、すらすら話せる自分や緊張していない自分のように振舞おうとしますが、自分のことをよく見せようとすると、さらに緊張するという悪循環に陥ります。
緊張を受け入れることで、楽になることがあります。「今日は面接なのだから緊張しても当たり前じゃないか」という考え方を持ち、緊張しても良いんだと考えていきましょう。
どもった時にも、起きてしまったことを振り返るのではなく、言える範囲で自分のペースで言えば良いとの開き直りの考えを持ってください。
吃音の症状にもよりますが、面接官は「すごく緊張しているだけ」という判断で、あなたを見ているかもしれません。
自分に自信を持つためにはどうすればいいか?
吃音のない人であっても、「就活の際に自分に対する自信を持っている人」は、少ないものです。
また、就活の準備として自己分析を行う人も多いですが、丁寧に自己分析をしていくと誰もが「自分にしかない経験」が見つけることができます。
同じような学校に行き、同じような部活に行っていたとしても、よくよく思い出してみると自分にしかない悩みや、自分にしかない体験などがあるものです。
また、この記事を見ている人は、吃音を抱えながら就活に挑んでいる人が多いはずです。
吃音に悩むあなたは、「吃音があったけど、ここまで頑張ってきた自分」に目を向けてください。
あなたは、吃音があってもここまで頑張ってきて、就活に挑戦しているのです。
吃音を抱えながら就活をすることは、実はとても大変な苦労です。
苦労しながら前向きに努力している自分の姿は、とても誠実で一生懸命です。
吃音に悩みながら、何度も恐れを感じながらもここまでやってこれたあなた自身の誠実さに目を向けてください。
周りと比べてしまう時にはどのように考えたら良いか?
吃音のない人にとってもある人にとっても、日本の就活という一大イベントには、ある種のセオリーのようなものがあり、その枠に入っていないとダメだという考えを持ちがちです。
たとえば、「ちゃんと話せないといけない」という考えも、セオリーの一つかもしれません。
就活とは、あなたと会社の交渉現場とも言えます。あなたが自分を売り込むセールスマンになって、あなたという人間にどうやって興味を持たせていくかが大事です。
周りの人と比べてセオリー通りに無難にこなすだけが全てではありません。あなたはあなたの道を行けば良いのです。
面接で落ちてしまう
何十社を受けても、中には100社以上受けても、なかなか内定をもらえない人もいます。
しかし、就活に挑んでいるあなたは、この先仕事をして食べていかなければならず、食いぶちを見つけるために、できることをするしかありません。
自分に合った会社を探し、時にはエージェントに相談し、最後まで諦めないで挑んでいくことが大事です。
基本的には企業から不採用の理由が聞けませんが、エージェントを利用すると不採用の理由を伝えてもらうことができます。
そして、吃音以外不採用の理由がないかを考えていくことが大事です。いずれにしても、就職活動を通じて自分と向き合った経験は、今後のあなたの人生にとってとても大切な経験になります。
それでもなかなか就活が決まらない場合、今の自分に合った会社を見つけるのか、吃音の治療を受けるのか、精神障害者手帳を取得するのか、さらに選択肢もあります。
最大限の努力をしていけば、あなたの満足する結果が必ず得られるはずです。
他にどのような練習をするべきか?
自分を客観視する
話す練習だけではなく、自分を客観視していく練習が大事です。そのため、面接の練習は必ず録画して練習する必要があります。それは自分を客観視するためです。
自分を客観視していない状態で練習を重ねると、本来の自分の姿に気付きにくくなります。それは、自分の思い込みのフィルターがかかるからです。
自分の思い込みに惑わされないように、録画をして客観視することが大事です。
さらに録画したものを他人にも見せて、意見をもらうことも良いです。他の人からどう見えているのかが具体的にわかることで、自分の振る舞いにもだんだんと自信が持てるようになるのです。
常に結論から話す練習をする
話の流れが途切れて、しどろもどろにならないために、常に結論から話す練習をしましょう。結論から話すことで、自分が迷っている部分を整理しやすくなります。
自己理解を深める
自分がどのようなことを考えているのかを徹して見つめていき、自分という人間の特性や考えを理解していきましょう。
自己理解を深めるための練習として、自分の特性や考えを紙に書き出し、いちいち他人目線でツッコミを入れてみると良いです。
「なぜ、そう思うの?」「何が好きで、何が嫌いなの?」という具合に。
リアルな自分の気持ちをたくさん紙に書き出してみると、自分の理解が深まります。
どのようなサポートを受けるべきか?
就活が不安で行動できない時には、専門家の援助を受けることができます。一人で抱え込んで考えていくよりは、就活のエキスパートに相談すべきです。
キャリアセンター
大学生は、キャリアセンターでサポートを受けることができます。
大学のキャリアセンターでは、面接指導を受けることができたり、応募書類の書き方を教えてもらえたりすることができます。
キャリアセンターの担当者に、吃音のことも相談することができます。ただし、担当者の吃音理解が浅い場合があるため、ある程度は吃音のことを自分で説明することも大事です。
担当者の吃音に関する意見が自分の意にそぐわない場合は、それ以上吃音のことについては相談しなくても良いです。必要なことだけを相談していきましょう。
エージェント
エージェントに相談するメリットは、求人情報が多いことです。エージェントは、大学の相談窓口に比べ企業情報の情報源が異なるため、大学に来ている求人以外の情報も持っています。
また、自分には何が向いているかわからない人は、目標を立てることが大事です。目標について相談する場合にも、専門家に相談することで目標の上手な立て方を教わることができます。
吃音で障害者手帳は取得できるのか?
※画像はイメージです
必要な手続きを行い、行政で認可された場合には、吃音で精神障害者手帳を取得することはできます。
ただし、障害者手帳を取得された場合は、障害者枠で働くことになるため、障害者手帳を取得するべきかどうかは慎重に考える必要があります。
例えば、「私は吃音があります」と伝え、就労先の人に理解をしてもらうだけで、健常者枠で通常通り働くことも十分にできるからです。吃音症を持つほとんどの人は健常者枠で働いています。
しかし、あなたの将来を考えに考えた結果、吃音の不安や困難のリスク回避を最優先することを選択された場合は、取得することを検討しても良いかもしれません。
吃音と障害者手帳については、こちらの記事をご参照ください。
就職後も吃音で苦労するのか?
就労後には職場の人にも吃音のことを理解され、仕事上さほど困る場面がなければ何とか過ごせていくこともあります。
しかし、就労後に吃音で苦労することが多いのは事実です。
過去にアメリカで実施された調査では、以下のようなデータがあります。
この調査は、就労している18歳以上の吃音を持つ人232名を対象に行われ、回答には以下のような内容がありました。
・70%の人が吃音は雇用と昇進の機会を減らすことに同意を示した
・69%の人が吃音は仕事のパフォーマンスに時々支障をきたすと回答した
・20%の人が吃音があるために実際に仕事や昇進を断ったと回答した
この研究では、「吃音のある人は、吃音が就労に悪影響を与えていると考えている」ことを示しています。
※教育を受ける機会や人種による差異の影響も考えられます。
引用文献
Klein JF, Hood SB.(2004)
The impact of stuttering on employment opportunities and job performance
日本でも成人の吃音のある人に向けた生活実態調査があります。
10代から70代の吃音がある人271名に向けて行われた調査では、就活時に比べて就労後に吃音の苦労が増えたかどうかの質問において、
就労後に苦労が減ったと答えたのは41名
変化なしと答えたのは92名
就労後に苦労が増えたと答えたのは120名
との結果が出ています。
また、吃音による苦労場面は電話が96名と最も多く、続いて特定の言葉、雑談・日常会話、プレゼン発表、朝礼となっています。
引用文献
飯村大智(2016)
生活実態調査による成人の吃音者の就職・就労に関する研究
就労後の吃音への苦労に備えて改善への取り組みを行う場合は、
就活前または内定が決まった後に吃音の改善に取り組むことで、
吃音を治す方法が知りたい
吃音は治るのか、本当に改善できるのか?
吃音の治療を受けて吃音が良くなる人はいます。ただし、すべての人が同じように良くなるわけではありません。
「大人の吃音は治らない」と一般的には言われていますが、実際には大人になってから治療を受けて吃音が良くなった人もたくさんいます。
吃音を持っているほとんどの人は「吃音を治したい」と一度は考えるのではないでしょうか?
しかし実際には、社会には吃音を受け入れて仕事をしている人の方が多いです。その理由としては、吃音があってもなんとか隠したり工夫したりしていたりして、良くも悪くも吃音が日常生活に適合していることが挙げられます。
もちろん「それでも、私は治したい」「社会に出るまでに治したい」と願い、吃音を改善させるための取り組みをされる方もいます。
治療すべきかどうかの判断は、就職してからのことも視野に入れて自分の状況に合わせて考えていけば良いです。
また、吃音の治療法は、いくつかの種類があります。大まかに言うと、楽に話せる発声を身につけるための言語トレーニングを行う方法と、言語トレーニングを行わないカウンセリングを中心に行う心理療法があります。
どの方法が適しているかは人によって異なるため、専門家に相談しましょう。
就活を機に吃音の改善に取り組んだ人からのコメント
就活を機に、就労後のことを見据えて吃音の改善に取り組まれる方もいます。吃音の改善を目指すかどうかは、人により異なり、当事者の症状・職場環境・吃音観(吃音のことをどう捉えているか)なども関係しています。
就活を機に受講された大学生のお二人からいただいたコメント
20代 経理 上杉さん(仮名)
「あまり意識することもなくなり、普通に話せている」
20代 IT関連企業勤務 栗田さん(仮名)
「こういう機会がないと、吃音に向き合うことはなかったかもしれない」
就活を機に受講された大学生のお二人からいただいたメッセージ
「セッションを受けるうちに自分に変化が出てきて吃音の心配がなくなりました」
「就職する年齢となり、最後の挑戦という気持ちで訪れました」
吃音改善への取り組みを行う場合
吃音改善の取り組みを行うためには、自分の吃音の程度を把握しておくことが大切です。
進展段階が進んでいくにつれ、吃音を避ける傾向が高まります。そのため吃音症状を普段から出して話す人もいれば、上手に隠せている人もいます。
まずは、あなたの吃音の進展段階を知ることから始めてみましょう。
自信を持っていただくために
吃音に対して深い悩みを持っていて就活に前向きになれない場合は、
まとめ
吃音があっても面接で内定をもらうことはできます。面接で不利になるかどうかは、あなたが受けようとしている会社、当日の面接担当者、あなたの症状の程度などによります。
できる限りの対策を行い、受けれるサポートは受けた上で面接に臨んでいきましょう。
あなたが吃音に負けずに、就職を勝ち取られることを心から応援しています!