吃音は子供の頃からではなく、大人になってから発症する人もいます。例えば、就職してから電話で第一声が言えなくなってきた人や、10代後半から会話の中でどもり始める人がいます。
吃音の多くは幼少期から10代前半までに発症する発達性吃音ですが、10代後半以降に見られる吃音に、ストレスなどが原因の心因性吃音があります。
この記事では、心因性吃音について詳しく述べていきます。
もくじ
心因性吃音とは
心因性吃音とは、ストレスが長く続いたり、トラウマのような出来事を経験したり、心理的な要因がきっかけで起こる吃音です。
吃音の症状
症状は、発達性吃音のように、連発(言葉を連続して発する)、難発(言葉が出てこない)、伸発(言葉を引き延ばして発する)が見られます。
人によっては、状況が変わるとなめらかに話せることがあります。
発症時期
心因性吃音は、10代後半以降から成人になってから発症します。
子供の頃の吃音が再発する場合
子供の頃に少しでも吃音があり治まっていたものが再発した場合、それは心因性吃音ではなく発達性吃音です。
ストレス要因について
私たちは、生活する中でたくさんのストレスを受けます。学校や仕事での出来事、日常生活での人付き合いなど様々なストレス要因があります。
慣れていない状況に直面したり、苦手な人と付き合わなければならなかったりすると、心に負担がかかることもあるでしょう。その他にも、突発的に心に傷を受けるような出来事は心因性吃音の要因となります。
このような症状は吃音ではない可能性があります
吃音以外でも言葉が詰まる症状はあります。以下のような場合には、吃音ではない可能性があります。
・どもるのではなく、ゴニョゴニョと言葉が不明瞭になり話す
・声がかすれることが主な症状である
・すかすか抜けるような発声をする
・常に喉を絞るように発声する(吃音の難発症状ではない場合)
心因性吃音を克服していくために大事なこと
では、心因性吃音を克服していくには、どうすれば良いのでしょうか?以下、まず、あなたが行うべきことを記していきます。
ストレスを減らしていく
まず、ストレスを軽減するためには「ストレスの原因となるものから距離を置くこと」が基本です。自分がストレスから解放されるために、お仕事の環境など変えられることは変えていくことが大事です。
とはいえ、ストレスのある環境をすぐに変えることはできないかもしれません。まずはできることからで良いので、ストレスから距離を取ることを考えるべきです。
そして、自分をいたわる時間をたくさん増やし、快適な自分で過ごせる環境を自ら作っていくことです。
誰かに相談すること
一人で悩みを抱えていると精神的にも追い込まれ、さらに症状が悪化することがあります。職場で相談できる人がいれば、まず相談しましょう。今の状況を変えていくために何かできることがあるかもしれません。
また、家族や友人に相談したり話を聞いてもらったりして、人に話を聞いてもらうことでまずは心を少しでも軽くしていきましょう。
カミングアウトする
他人に吃音のことを打ち明けるのは勇気がいることです。ただ、他人に誤解されないためにカミングアウトは一つの手段として有効です。
もちろんカミングアウトを誰にするのかという人選も大事です。あきらかに理解されないような人に打ち明けても逆効果です。
基本的に、他人はそこまで吃音のことを気にしていません。そのため、打ち明けたとしても「ふーん、そうなんだ」程度に捉える人も多いです。
カミングアウトは他人に誤解されないようにし、「どもってはいけない」という自分のプレッシャーを軽くすることが目的なのです。
会社や学校では吃音の認知度も低いため、吃音を知らない人が多いこともよくあります。自分を責めるのではなく、「周りが吃音を知らないだけだ」という事実に気づいてください。
職場や学校でどもってしまって困っている場合、吃音をカミングアウトするとしても、人によって様々な状況が考えられます。カミングアウトすることで状況が良くなるようならしたほうが良いです。
しかし、そうではない場合には、無理してカミングアウトする必要はありません。
吃音の治療を受ける
心因性吃音の治療は、発達性吃音で用いられる治療が有効です。言語療法や認知行動療法、その他の心理療法を基にした治療法で改善を目指します。
サポートを受けて、吃音を治療または改善させていくことは大事です。状態の正しい把握もできますし、自分の状態を理解してもらえることでストレスも軽減されます。
そのために、カウンセリングを受けたり吃音を診てくれる機関に行き相談することから始めてみてください。
大人になってからの吃音が改善された方の例
東京吃音改善研究所に来られる方にも、大人になってから吃音を発症された方がいらっしゃいます。
今回は、ご本人様の許可を得ていますので改善されたケースをご紹介します。
この方は20代後半から言葉が詰まるようになりました。そして、言葉が詰まることを意識するようになると症状はどんどん悪化していかれたそうです。
症状が出始めた主な理由はお仕事のストレスとのことでしたが、お仕事の環境が改善されても症状だけが残っていました。
こちらでは、言語訓練と認知行動療法を行い3ヶ月ほどで症状が改善されていかれました。
「私は子供のころからの吃音ではなく、大人になって、就職してから吃音が出はじめました。
最初のころは自分に何がおきているのかもわからず、どうしていいかもわかりませんでした。そんな時に東京吃音改善研究所を知りワラにもすがる思いで受講しました。
セッションで何が原因でどもってしまうのか、自分の体がどうなっているのか、どうしたら良いのか、など多面的にご指導いただき、わずか3ヶ月ほどで改善できました。
元々の吃音者でなかった自分にとっては、見失っていた本当の自分をとりもどせた気分です。」
この方のように、心因性吃音の場合は大人になってから発症するため、「以前はちゃんと話せたのに」と楽に話せていた状態を知っている分、戸惑いや不安を抱えることが多いです。
心因性吃音を克服するために、自分に合った適切な対応を行い改善を目指していきましょう。
吃音には進展段階があります
吃音改善の取り組みを行うためには、自分の吃音の程度を把握しておくことが大切です。
吃音がある人は進展段階が進んでいくにつれ、吃音を避ける傾向が高まり進展していない人に比べると改善への取り組みも異なります。
まずは、あなたの吃音の進展段階を知ることから始めてみましょう。
まとめ
心因性吃音とは、10代後半から発症する吃音です。長く続くストレスや心にダメージを受けたりすることが要因で発症します。
治療には発達性吃音で用いられる方法が有効です。一人で抱え込まずに親しい人や専門家に相談しながら改善していきましょう。