家では話せるのに、外では話せなくなるという「場面緘黙症」。吃音と、どういった関係があるのでしょうか?
この記事では、場面緘黙症と吃音の関係について丁寧に説明していきます。理解を深めていただき、対処のヒントを得ていただければ幸いです。
もくじ
場面緘黙症とは
場面緘黙は、小児期の情緒障害の一つです。情緒障害とは、気分の現れ方が偏っていて、それを自分でコントロールできないため、生活に支障をきたす状態のことです。
場面緘黙の症状の発現頻度は人口の0.7%で、男子より女子の方が多いです。あまり知られていないため、場面緘黙の症状を持つ人は少ないように思われがちです。
実際には、症状があっても気付かれていない場合もあります。まれな障害ではなく、実際にはかなりの数にのぼるといわれています。
場面緘黙の子は、家では普通に話しているのに、外では緊張し話せなくなるなります。コミュニケーションに対する理解力や表現力は十分に持っていても話せなくなるのです。また、家族であっても、あまり親しくない父や祖父に対しては話せないこともあります。
症状を持つ子の緊張感は、親しい家族から知らない他人に向かっていくにつれて、だんだん強くなる傾向があります。ただし、自分のことを知られていないところでは、その緊張感は緩んでいきます。
気質
場面緘黙を持つ子は、内気な傾向の子・行動抑制的な子が多いと言われています。「行動抑制的」とは、見知らぬ人や慣れない状況に対して、適応するのに時間がかかることです。
場面緘黙の要因
場面緘黙は、いくつかの要因が発症に関わっているとされています。場面緘黙症の研究を行っているレスター大学名誉教授のセージ博士は、発症の要因について考えられることを、以下のように述べています。
・遺伝的な要因
親族に、人との会話を恥ずかしがったり、不安がったりする傾向の人がいる
・社会的、文化的な要因
本人が、社会的に孤立した状態で暮らしている。また、子供にとって、コミュニケーション面で、マイナスな影響を与える家族と一緒にいる。
・症状が発現する引き金となる要因
入院、家族の死、引っ越しなど、子供にとっては恐ろしく感じられるような出来事
・症状を固定させてしまう要因
ストレスや当事者への不適切な要求が続くことにより、緘黙を助長させる
場面緘黙と言語活動との関連
場面緘黙の主要な症状は恐怖感です。恐怖を感じることにより、脳の活動が影響を受け、発話がしづらくなる現象が起きます。
脳の機能は、左脳が「言語活動」を行います。右脳は「意味づけ」を行うため、恐怖を感じる時には右脳の活動が増します。つまり、情緒不安定になることにより、右脳の「意味づけ」の機能が影響を受け、「考えを言葉にする」のが難しくなるとの見解もあります。
吃音と場面緘黙の関係
上記に要因を示したように、場面緘黙と吃音は違うものですし、吃音は場面緘黙の原因でもありません。ただし、吃音と場面緘黙が同時に併発していることがあります。併発する場合には、両者が相互に影響します。
たとえば、幼少期から吃音が出ていて、話すことが困難であったために、幼稚園に入ってからも言葉を発する機会が減っていった場合などです。この場合、どもるから話さない面と、緘黙で話さないために吃音の回復が遅れるということが考えられます。
まとめ
人前で話せなくなる症状を持つ場面緘黙症は、吃音症とは違うものです。場面緘黙は、症状があっても気づかれないことがあります。本人は困っているため、吃音と同じように、周囲の理解と支援が必要です。
緘黙症の情報交換を行う団体が運営する「かんもくネット」に詳しい情報が書かれていますで、ご覧になってください。かんもくネットのページはこちらです。