吃音の原因

なぜ吃音が起こるのか原因が知りたい

吃音は何が原因で起きるのでしょうか?親との関係や先天性の原因があるのでしょうか?吃音の原因を解明するため、現在様々な研究が行われていますが、未だ特定はされていません。

この記事では、吃音の原因について現在わかっていることを基にわかりやすくお伝えしていきます。

 

吃音の原因は何なのか?

発達性吃音と獲得性吃音

吃音には、幼少期から10代前半までに発症する発達性吃音と、脳の損傷やストレスなどにより発症する獲得性吃音があります。

吃音症の9割は発達性吃音です。この記事では、まず最初に発達性吃音の原因についてご紹介し、その後、獲得性吃音の原因についてご紹介します。

 

発達性吃音の原因

発達性吃音の原因は、まだはっきりとはわかっていません。そして、吃音は、一つの原因で決めつけられるものではなく、以下のような、様々な要因が相互に関係し合っていると考えられています。

体質的要因

体質的な要因は、吃音の原因の70%を占めると言われています。つまり、吃音になりやすい何らかの素因(素質)があるということです。吃音に関連する遺伝子についての研究も行われており、いくつかの遺伝子の関連が報告されています。

この「吃音になりやすい」体質がある子どもは、言語を獲得する時の過程で吃音が起きることが多いです。そのため、吃音は言語を獲得するときの副産物のようなものであるとも言われています。

 

回復するかどうかも体質が関係している?

幼少期に吃音になり、その後に回復していく子どもと、回復しない子どもにも、それに関する遺伝子があるのではないかとする考え方もあります。

敏感さなどの気質も、吃音の維持に関連しているかもしれないと考える研究者もいます。

発達的要因

発達の途中段階である子供にとって、周囲から高度な要求をされる(または周りと競わなければいけない状況)ことは、時には混乱につながります。長い複雑な文章を話す時、(吃音がない子供も含む)多くの子供にとって負荷がかかるものです。

発話の遅れを持つ子供にとって、高度な言語能力を要求されることは、大きなストレスになります。また、その反対に、言語発達が高まった子供がたくさん話そうとした時、子供の未熟な能力では、話すことに限界があります。

そして、就学前の子供における発語器官などの急速な身体の変化が、スムーズな発話の調整を難しくさせることもあります。

これらの発達段階における要因が、吃音の増減に関係することがあると考えられています。ただし、このことのみで発症するというよりは、体質的な要因も含めて考える必要はあります。

環境的要因

子供の周りの環境による影響が、吃音を増減させることがあります。例えば、話す時に他の人に頻繁に割り込まれたり、話している相手から急かされたりすると、吃音のある子は話しづらくなることがあります。

周りの人が早口であったり、母国語と第二言語など家庭内で2つの言語が話されていることも、子供にとってはストレスに感じるかもしれません。

転居や家族の入院、親の離婚など、なんらかの出来事が、子供の安心感を揺るがす場合があります。これらの子供を取り巻く環境は、直接的な原因にはならなくとも、ストレスとして感じた時に、吃音の増減に影響があるのかもしれません。

また、親御さんの中には自分のしつけが理由で吃音が起きると考える人がいますが、この考え方は適切ではありません。環境要因については、実証的な研究が乏しいことに加え、吃音になりやすい体質がある上で関連することがあることがあると考えるべきです。

学習的要因

吃音を経験するたびに、「どもってはいけない」という吃音への否定的な考え方が生まれることがあります。誰かにからかわれたりすることも、「どもってはいけない」という吃音への否定的な考え方につながります。

成人でも同じですが、どもってはいけないと考えるほど、どもるようになります。どもるたびに学習される負の経験は、吃音発症後、吃音の増減に関わることが多いです。

様々な要因が複雑に絡み合って吃音は起きています

とても複雑なこれらの要因を、「吃音の原因は◯◯です」と一言で言い切ることは、難しいことです。もっと研究が進んでいくうちに、さらに明らかになることがあるでしょう。

 

獲得性吃音の原因

獲得性吃音には、神経原生吃音と心因性吃音があります。以下、それぞれの原因について述べていきます。

神経原生吃音

これは、脳の損傷などにより発症する吃音のため、原因がわかりやすいです。脳の機能の障害によって吃音が起きているのです。脳卒中、脳の腫瘍、頭部外傷などにより、発症することが知られています。

心因性吃音

心因性吃音は、ストレスの積み重ねや、大きなショックをもたらす出来事により、発症します。10代後半から発症するため、大人になってから吃音になった人の中には、心因性吃音の方もいらっしゃいます。

このように吃音といっても多様であり、簡単に原因を特定することはできません。現在できることを考えると、原因を特定するよりも、今のあなたの吃音が良くなること、生活に支障をきたさないことに意識を向ける方が大切です。

今後も、より良い生活を送っていけるように、知識を持ちながらも、今の自分を大切にしていきましょう。

 

まとめ

吃音の原因は、吃音の種類によって異なります。幼少期から発症する発達性吃音では、体質、環境、発達、学習などの要因が関連しています。神経原生吃音では脳の損傷や病気が要因となり、心因性吃音ではストレスなどが発症の要因になります。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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