吃音の受容・付き合い方

吃音を受け入れるとはどういうことか?

吃音は、改善したい人もいれば、受け入れていく人もいます。どもることを受け入れるとは、どういうことなのでしょうか?この記事では、「吃音の受容」吃音を受け入れることについて述べていきます。

吃音を受け入れるとはどういうことか

吃音を受け入れるとは、どもりのある人が「どもる自分の現実を受け入れ、自分らしく生きていくこと」ということと言えます。

どもる現実を受け入れるとは、決して諦めではありません。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、受け入れながら吃音の改善を目指すこともできます。

また、受け入れ方は人それぞれであり、受け入れることをあえて意識しなくても、うまくやっている人はたくさんいます。

人生の他のことにも目を向け、吃音があっても人生を自分らしく生きていくということです。

本来、人と話すということは、どもらずにうまく話せることだけが重要なのではなく、「自分の気持ちを伝えていくことが大切」です。

しかし、吃音でこれまで悩まされてきた人、今も深く悩んでいる人にとって、「どもること」を受け入れることは簡単なことではありません。以下、少しでもあなたの気持ちの整理がつくように、様々な角度から私の意見を投げかけていきます。

みんなが同じように吃音を受け入れることはできるのか?


当たり前ですが、吃音を受け入れることに対して、人それぞれ考え方は違いますし、統一できるものではありません。それは、なぜかというと、人それぞれ吃音の症状や経験してきたこと、生活環境、考え方が違うからです。

例えば、経済的にも恵まれ、生活も安定している人は、吃音があっても生活には困らないかもしれません。しかし、職場での吃音が自身の業績に大きく影響する人にとっては、吃音が時には死活問題にもなり得ます。

また、どれだけ裕福な生活をしていても、吃音を克服したいという気持ちが強くある人もいます。これは、これまでの吃音経験などが影響し、吃音への否定的な認知(考え方)が強いということでもあります。

吃音を受け入れられない場合、どうすればいいか?


吃音を受け入れられない理由は、多様です。あなたが考え方を変えれば受け入れられるのかというと、一概にそうとは言えません。そんなに単純なものではないのです。

もしかしたら、吃音以外に何らかのコミュニケーション上の課題があるのかもしれませんし、吃音以外の面でも何らかの不安が存在している場合もあります。

どのような理由があろうが、受け入れられないのに無理に受け入れようとする必要はありません。吃音をどう捉えていくかの選択は、あなたの気持ちが少しでも楽になるために選択すれば良いのです。

周囲との関係

仲間に恵まれていたり、吃音のある人が周りにいる人たちは、「吃音があっても自分は認められているんだ」と感じるかもしれません。吃音がある自分をそのまま受け入れられていると感じることで、吃音への嫌悪感が和らぐことがあります。

これまで一度も吃音を持つ人に会ったことがない人や、カミングアウトしたことのない人は特に、吃音を知られたくない不安を抱えがちです。

一人で悩むのが辛い時には、吃音を持つ人たちの集いに参加することで、吃音のある自分を受け入れることができるかもしれません。

また、矛盾するようですが、吃音を持つ人たちのグループに参加しながらも、「このままここにいるのではなく、吃音を改善し吃音から開放されたい」と願う人がいるのも事実です。

吃音をどう捉えていくか

あなたが吃音をどう捉えるかは、あなたの自由であり、あなたが良いと思った考え方があるはずです。また、考え方は途中で変わっても良いし、人間は日々成長する生き物である以上、自然と考え方が変わることもあるでしょう。

吃音に悩まされた私たちは、自分自身に対して自信を失っていることも多いです。そんな自分を少しでも大切に労わりつつ、私たちが満足できる人生を送るために行動していけば良いのです。

吃音を受け入れるためにできること

どもる自分を受け入れていくために、できることはたくさんあります。吃音以外の面で、日常生活の充実感を増やすことも、その一つです。

趣味や仕事など吃音があっても打ち込める何かが見つかれば良いですが、見つけられない人もいます。その場合には、何でも良いので素直に本能のまま心から楽しいと思える「時間」を過ごすことです。

人生の目標、価値観をしっかりと持つこと

「何のために」という、自分が生きていくための信念や価値観を強く持っている人ほど、困難に立ち向かう気持ちも強くなります。また、楽観的な考え方を持つことで、日常の景色が一変していくこともあります。

自分を支える強い信念を構築していくために、優れた思想に触れたり、本などを通じて偉人の生き方などから学ぶことも良いです。自分を高める思想や信念に出会うことで、人生の価値をも高まっていくことでしょう。

考え方を増やす努力をすること

自分がどういう考え方の傾向があり、どういう基準で物事を考えているのか、見直してみましょう。あなたは、何を基準に自分の人生を見つめているのでしょうか?

例えば、「この大きな宇宙の中で、たった一度の人生、世界で一人だけの自分の人生を生きている」と今のあなたの貴重な瞬間に思いを馳せる時、他にやるべきことがもっとあるかもしれません。

広い世界を見渡し、無限に広がる宇宙から自分や周囲の環境を見下ろせば、吃音を小さいことと感じる人もいるかもしれません。

あなただけの人生を、あなたが自由にデザインするとき、吃音があっても楽しめること、できることがあるはずです。視点をたくさん持つことで、人生の選択肢は増えていきます。

受け入れることで吃音がひどくなるのでは?

吃音は受け入れると、ひどくなるのでしょうか?

本来、吃音は、どもりたくないと思うほどに、症状が出やすくなったり、不安が強くなったりします。つまり、吃音を隠そうとするほど、吃音の症状に悩まされます。その点では、周りに見せても良いという吃音への受け入れの態度があれば、症状に悩まされる気持ちは軽くなります。

吃音のカミングアウト

人にもよりますが、カミングアウト(周りの人に、自分が吃音であることを伝えること)をすることで、気持ちが楽になるでしょう。もちろん、吃音を理解してくれそうな人にするべきです。

ただし、カミングアウトをした上で吃音を気にすると、症状がよけいに気になってしまうことがある人もいますので、気をつけてください。

改善と受け入れのバランス

吃音の改善が少しでも進むことで、受け入れることがしやすくなることがあります。例えば、どもりそうな時に、「こうすればいい」と思えるようなテクニックを手に入れることで、吃音への恐れが減っていく場合があります。

どもりは完全になくならなかったとしても、日常生活で困る場面がなくなったりすると、楽に生活出来るようになるのです。また、言語トレーニング以外のセラピー効果により、どもることが怖くなくなることで、症状が改善していくこともあります。

まとめ

吃音を受け入れるのも、改善を目指すのも全ては自由な意思の元にあります。

「あなたがより良い人生を送っていくために」を基準に考えていけば良いのです。どんな選択をしようとも、あなたらしく前に進んで行ってください。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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