吃音が出てしまうことで悩んでいると、バイトに行くこと自体が辛くなります。本当はバイトしたいのに、行きたくないと思うくらいに辛い時がありますよね。
今すぐバイトをやめれば気持ちが楽になることもありますが、もしかして何かできることがあるのなら今できることを全てやってみるべきです。なぜなら、辞めた後でも後悔せずに済むからです。
以下の様々な状況における実際の先輩の体験談や対処法をご参照いただき、バイトの吃音で悩むあなた一助となれば幸いです。
もくじ
バイト中の辛いこと、困りごと対策
吃音があるためにバイトで困ってしまう状況ごとに、実体験の声と対策をご紹介していきます。
ご理解いただきたい点として、以下の内容は吃音の治療や改善の観点ではなく、あくまで現状に対処する視点でご紹介しています。
きちんと吃音の改善に取り組む場合には、吃音にまつわる様々な工夫(例えば、苦手な言葉の言い換えなど)をやめていく必要があります。
しかし、吃音の治療などを受けていない人にとっては、言葉の言い換えなしには対処できない場面があります。そのため、この記事でご紹介する内容は、あくまで対処であるということをご理解ください。
レジでどもる時の対策
バイトの状況
カフェ、ファストフードなどの飲食店やスーパーなどの販売店はもちろんのこと、サービス業ではレジはつきものです。レジで定型文や金額が言えないことで悩む人も多く、お釣りを渡す時にお礼が言えないことで悩む人もいます。
先輩たちの声
「『ありがとうございます』が言えなくて困った時に少し間を開けて言っていた。 」
「特定の数字が言えなくて困ることがあった」
「レジで対応する時にちょっと間が空いてしまったりしてしまうことがありました」
対処法のアイデア
- 自分のペースで言うこと 。(多少適当に言っても気づかれないことも多い)
- 緊張している自分を客観視できるようになること(客観視できることによって、少し気持ちに余裕が生まれます)
- 可能であればレジの業務を外してもらうようにお願いする
注文を取る時の対策
バイトの状況
ファミレスのようなチェーン店ではマニュアル通りの応対が求められることがありますが、マニュアルのないところでは積極的にお客さんに話しかけていかないといけないこともあります。
先輩たちの声
「決められた内容をお客さんに説明しなくていけなくて、なんとかごまかしながらやっていました 」
「メニューは言葉の言い換えができないので困っていました」
対処法のアイデア
- 出来るだけ自分なりの言い方で言う
- 自分なりの間を使う
- ボディランゲージを使いながら話す
- メニューを指差しながら説明する
- (できるなら)笑ってごまかす
不安が強い時
バイトの状況
吃音が出てしまう不安が強く、仕事中や終わった後も常に吃音のことを考えてしまうくらい不安が出る人もいます。不安が強すぎる場合には心療内科でお薬を処方される人もいます。
先輩たちの声
「お客さんに注文を取った後、それを大きな声で言わないといけない時があってうまくごまかしてやっていました」
「お店にお客様がご来店された時にいらっしゃいませが言えない」
対処法のアイデア
- お客さんにとっては注文できれば良いので、お客さんは気にしていないということを改めて認識する
- 職場の人に相談する
- 同じ環境でバイトを続けるかどうかを考え直す(あまりに不安が強い時には、場所を変えてもらったりしばらく休ませてもらう又はややめることがやむを得ない場合もあります。)
職場の人に理解してらうことが大事ですが、理解されない時にはあなたの心の安定を守ることを優先するべきです。時にはバイトを変えることも視野に入れた方が良い時もあります。
お客さんと話す時の対策
バイトの状況
接客中の何気ない会話でどもってお客さんから笑われたり、話の流れの中で特定の言葉が言えずにごまかしてしまったりすることがあります。
先輩たちの声
「いじってくるお客さんもいましたけど、仲良くやってたので気にならなかったです」
「言葉を言い換えてごまかしてました」
対処法のアイデア
- 自分のペースで話す
- 適当な雑談も交えて、相手との関係性を深めていく
出来るだけ、話すペースを相手に合わせないようにし、相手のペースに巻き込まれないように注意しましょう。
また、親しくなれるお客さんの場合、関係性を深めていことで話しやすくなることがあります。時には「ちょっと言葉かむんですよね」と軽いカミングアウトがしやすくなることもあります。
挨拶・掛け声でどもる時の対策
バイトの状況
飲食店での「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」などや、バイトを終え帰る時に「お先に失礼します」などが言いづらいことがあります。
先輩たちの声
「言う回数を減らしてごまかしてます」
「大きな声で威勢よく言ったら言えた」
対処法のアイデア
- 職場の人(上司など)に相談する
- 適当に言ってみる
- 軽く息を吸ったり、ひと呼吸置いたりしてから言う
- 歩きながら又は動きながら言う
インカムでどもる時の対策
バイトの状況
アパレルや電気屋の大型店舗などでインカムが使われます。インカムでどもってしまうと他のスタッフにも聞かれてしまうというプレッシャーがあります。
先輩たちの声
「言葉を言い換えたり工夫してた」
「先輩に相談した」
対処法のアイデア
- 職場の人に相談する
- 「えーっと」などの接続詞を上手に使い、自分なりの言い方で言う
朝礼でどもる時の対策
バイトの状況
朝礼や朝のミーティングで接客用語を呼称したり、1人で会社のモットーなどを唱和しなければいけない時です。特に苦手な言葉があると困ります。
先輩たちの声
「どもりながらもなんとかやってました。みんな知ってるんで、笑ってごまかしたり」
「以前は気にしてたんですけど、開き直ってどもってもいいやと思ってやるようになりました」
「自分の番が来る前にタイミングをとったりして言ってます」
対処法のアイデア
- 職場の人(上司など)に相談する
- 他のスタッフと仲良くなる
- 仕事を頑張って自信をつける
- 少しくらい間があいても気にしないようにする
電話でどもる時の対策
バイトの状況
会社名や自分の名前、「お電話ありがとうございます」などの定型文が言えないことがあります。
先輩たちの声
「バイト先の名前が変わってもまた慣れたらどもるようになった」
「誰もいない空いてる時間に練習した」
対処法のアイデア
- (可能であれば)場所を変えてスマホ・携帯から電話する
- 先輩に相談する
- 自分なりの言い回しをする
- 考え込んでしまう前に、すぐ電話をかける
決まった言葉が言えない時の対策
バイトの状況
「いらっしゃいませ」「店内ご自由にご覧ください」など、バイトによって決められた言葉(言わなくてはいけない言葉)があります。
吃音がある人にとって、この問題が最も多いかもしれません。接客業はもちろん、その他の仕事でも固有名詞などで言いづらい言葉がある場合もあります。
先輩たちの声
「どうしても難しいと思った時は、思いきって上司に相談したら、無理に言わなくて良いと配慮してくれました。」
対処法のアイデア
- 思い切って大きな声で言う
- わざと少しかみながら言う
- 自分なりの工夫を使う(「えー」など他の言葉を挟んだり、間を使う)
- 上司または先輩に相談する
職場の人と話す時にどもる場合は、どうすればいいか?
バイトの状況
職場の人たちとコミュニケーションを取る際に、どもりを見せないようにしようとして会話がぎこちなくなることがあります。
先輩たちの声
周りの人は前から知ってましたけど、カミングアウトしたら「気にすんなよ」と言われて嬉しかった
対処法のアイデア
- 職場の人と仲良くなる努力をしたり、食事(または飲み)に行ったりする
- 積極的に仕事をして、関係を良くする
- 「ちょっとかむんですよね」など、軽く打ち明ける
バイトがうまくいかない原因は吃音だけなのか?
この記事を見ていただいているあなたは、バイトでの吃音で困っていらっしゃるかもしれません。
あなたが悩んでいる問題は吃音だけなのでしょうか?
確かに、吃音さえなければバイト自体は問題なくできることがほとんどです。しかし、吃音があっても、人間関係や(吃音に関係しない)仕事への取り組みが、バイト環境に良い影響を与えることもあります。
カミングアウト(吃音であることを伝えること)への対策
職場の人に吃音をカミングアウトするべきか、理解してもらえない時はどうすれば良いかなどについて迷っている人のご参考になれば幸いです。
バイト先に吃音のことを言うべきか?
職種にもよりますが、吃音のことを理解してくれる職場も少なくありません。また、人間関係の度合いや上司の見解によるところもあるため、出来るだけ誤解を与えないように伝えなければなりません。
吃音のことを打ち明けるのはとても勇気のいることです。無理に打ち明ける必要はありませんが、あなたがやってみようと思えば、ぜひ挑戦してみてください。打ち明ける際には、どうやって打ち明けるのがベストかを考えていきましょう。
先輩たちの声
「上司に話したら電話応対をしなくても良いと言ってくれました」
「飲食業ですが、先輩に話したら接客用語も自分なりに言えば良いと言ってもらえました。なんとか頑張ってやっています。」
どうやって吃音のことを伝えればいいのか?
吃音当事者でなければ一般的には吃音のことをよくわからない人が多いため、どのような状況が困るかを具体的に話すことが大事です。相手は吃音のことを誤解している素人だと思ってください。
また、「よーし!言うぞ」と意気込んで突発的に打ち明けた際に、準備していないと、あたふたしてしまって誤解されることもあります。
そのため、伝えるべきことをきちんと整理してから伝えるべきです。何をどう伝えるかについて、以下のことを参考までに確認してください。
1、能力とは関係ないということを伝える
吃音はあなたの能力とは全く関係ありません。症状が出てしまって言葉が詰まるわけですから、会話能力の問題ではなく、言葉が詰まりやすくなる反応が起きていることを伝える必要があります。
人によっては「小さい頃からの体質なんです」と伝えてしまうのも良いです。
吃音は当事者でないと、その状態や悩みは分かりづらいものです。相手がわかっていないことを前提に、何を伝えるかを考えてみましょう。そして、「吃音のことでわからないことがあったら聞いてください」と、自分の症状の特徴を説明してあげることができれば良いです。
2、何をどうしてほしいかを伝える
吃音があるために、どのような状況で困っていて、何をどうしてほしいかを考えて伝えましょう。
例えば、電話応対が苦手な人は「電話を受ける時に特定の名前などで言葉が詰まってしまうことがあります。できれば電話応対だけ他の人に代わってもらえないでしょうか?」などと、具体的に伝える方がわかりやすいです。
特定な状況や言葉だけが問題となっている場合には、普段は自然と話せることもあることを伝えましょう。業務の多くをなんとかやり過ごせているなら、特定な状況以外は仕事に支障がないことを伝えることも時には必要です。
3、カミングアウトする状況・態度を選ぶ
時間のない状況で焦って伝えたり、あまり思いつめて話すと、力が入ってしまって思うように話せないこともあります。出来るだけ人のいないところで、余裕のある状況で伝えることも大事です。
また、あまり重苦しくないようにサラッと話した方が、その後の会話もしやすくなります。直接話しにくい場合は、まずはメールやラインで相談したり伝えたりすることも良いです。
先輩たちの声
「吃音のことを書いた紙を見せたら理解してくれました。」
「話してみたら、『みんな気にしてないから大丈夫だよ』と言われました。」
対処法のアイデア
- 本や信ぴょう性のある情報・知識(本など)を見せて理解してもらう
- 伝えるべきことをきちんと整理してから伝える
- 「体質なので」と伝え、理解してもらう
発声での対処法
全ての項目に共通することとして、言葉のトレーニングをしたり、どもらない話し方を使うということを考える方がいらっしゃいます。
確かにそのような訓練で上手くいく場合もあるかもしれませんが、個人差があります。
しかし、人によっては、発声を意識することによって、余計に吃音を意識してしまいます。そのため、この記事では、発声などについてはあまり触れません。
ご参考までに、簡単にできる楽な発声については以下のようなものがあります。
ゆっくり話す
いつもゆっくり話せるわけではありませんが、落ち着いて話すだけでも吃音を軽くさせることができる人もいます。その場合は、相手のペースに巻き込まれないように、ゆっくり話すことを心がけましょう。
音をつなげるようにして話す(一つ一つの文字をつなげるようにして話す)
言葉を区切るよりも、音を繋げるようにして話す方が話しやすくなります。
音を繋げることを確認するために、まず、喉に手を当ててみてください。喉に手を当てたまま話すと、喉の辺りが振動しますか?これは、声帯と呼ばれる声を発するところが振動しているからです。
この振動を途切らさないようにして話すと、音をつなげながら話す感覚を練習できます。
自分の声をよく聞くようにして話す
話すときに、自分の声を聞きながら話すと、話しやすくなることがあります。言葉の出だしが出にくいときは、「あー」でも「えー」でもどんな音(声)でも良いので少し音を出し、それを聞くようにしながら(聞きながら)話すことで話しやすくなることがあります。
出だしの音を引き伸ばして出す
最初の出だしの音が出なくて困っている場合、少しだけ出だしの音を引き伸ばして言うと、言葉が出やすくなります。
例えば、「よろしくお願いします」という言葉が出づらい時には、「よー、よろしくお願いします」という具合に最初の言葉を引き伸ばします。何回引き伸ばすかは自由です。例えば、「よー、よー、よろしくお願いします」と2回(3回でも4回でも)引き伸ばしても構いません。
ただし、あまり多用しすぎると、変な印象を与えることがあります。あくまで対処法ですので、使える範囲で使ってください。
出だしの音をそっと優しく発する
出だしの音をそっと優しく発する発声法を軟起声と言います。軟起声のやり方は、動画で解説しているので、こちらをご覧ください。
軟起声のやり方
※あくまで簡易的な対処法ですので、「これで治そう」などと思わず、あまり頼り過ぎないようにしてください。
息を吐きながら話す
軽く息を吐きながら話すと話しやすくなることがあります。話す前に、スッと息を吸い直後に話してみてください。
ここでご紹介した発声の工夫(古典的でよくある方法)は、あくまでご参考の範囲に留めてください。本当に吃音を克服できる程度の発声を身につけるためには、もっと細かく丁寧に行う必要があります。
さらに言うと、吃音とは言葉の出し方だけが問題になっているわけではありません。吃音が出ることへの不安や、どもってしまうことへの否定的な認知(物事の捉え方、考え方)が深く関わっています。
そのため、しっかりと吃音を改善するには、吃音への不安などの心理的な側面と吃音症状を総合的に把握しながら、一人一人に合わせた取り組みを行う必要があるのです。
どうしても職場で理解されない時には、どうすれば良いのか?
勇気を出して話しても理解されない時もあるかもしれません。吃音が正しく認知されていないため、理解することが難しいのです。
先輩たちの声
「結局、理解されなくて辞めました」
「治そうと思って治療を受けました」
「ちゃんと分かってもらえなかったんですけど、そのまま仕事はしてました」
残念ながら吃音のことを理解されずにバイトをやめざるを得なかった人もいます。そのため、吃音の話をする場合には理解してもらえそうな人に話すのが良いです。
また、吃音のことを理解されない時には、バイトを変えた方が良い場合もあります。理不尽に感じることもあると思いますが、バイトを変えてストレスなく働くことも選択肢の一つです。やるべきことをやってうまくいかない場合には、次のバイトを探しましょう。
吃音は治るのか?
完全に治るかどうかは人によりますが、基本的には大人になってからの吃音症は治りにくいと言われています。
それでも、自分に合った治療を受けることで、楽に吃音をコントロールできるようになったり、症状が軽減したり消失して治ることもあります。
吃音の治療についてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
よろしければこの記事に書いてあることを試してみたり、あなたなりにやるべきことをやってみてください。
そして、その上で不快な思いをしているのなら(自分の精神衛生上このまま続けるのは良くないと思ったら)、今のバイトをやめ、あなたにとってもっと働きやすい新しいバイトを探せば良いです。
吃音はバイトをする時の障壁になることがあります。しかし、吃音を抱えながらバイトに挑戦してるあなたの姿は、本当はすごいことなのです。