吃音当事者の現状

吃音はなぜこんなに辛いのか?

吃音を経験するということは、周りの人が考える以上に辛いことであり、苦しい経験です。誰にもわかってもらえず、人知れず悩みを抱えていらっしゃる方も多いです。悩みを抱える当事者としては、「もう無理」という絶望的な気持ちになることもあります。
そのような吃音の苦しさを少しでも和らげてもらえるように、この記事を書いています。少しでもお役に立てれば幸いです。

吃音がつらい理由として


どもることが、「どうして辛いのか」という理由は人それぞれ違いますが、吃音の特性として共通する点もあります。「思うように話せない」ことだけが、吃音の辛さではありません。
以下、例を挙げていきます。

周囲に正しく理解してもらえない

吃音の正しい認知度が低いため、周囲の人に「かんでいるだけ」「緊張しているだけ」と、誤った判断されることがあります。
目に見える言葉の症状だけで判断されることが多く、吃音の本当の辛さはなかなかわかってもらえないことが多いです。

どもっていない時に、「今は」どもっていないから大丈夫だよ」などと、言われることがあります。吃音は自己の心理状態や状況も大きく関連しているため、どもらずに楽に話せる状況もあるのです。

どうすることもできない状況に陥る

楽に話せる時もある反面、当事者は時として「どうすることもできない状況」に陥ります。

例えば、
・電話で第一声が言えない
・自己紹介で名前が言えない
・朝のあいさつの時に「おはようございます」が言えない

このような「どうすることもできない状況」が大変に困難なのです。名前を言い換えることはできませんし、挨拶も言い換えができなことがあります。

これらの「できないことをやらなければいけない状況」に直面する時、心は恐怖に襲われます。みんなの前で失敗し、アイデンティティーが傷つくことを恐れるからです。

仕事などで誤解されてしまう

公的な場には、きちんと話さなければならない状況があります。きちんと話すべき場でどもってしまうと、時には挙動不振な人、コミュニケーション能力の低い人などと誤解されてしまうことがあります。

これは、どもるのを隠そうとする行動や、吃音を知られたくないという当事者の気持ちも、誤解を与えることに関連しています

吃音を隠そうとする行動(言葉を不自然に言い換えたり、相手の視線を必要以上に気にしたりするなど)が、コミュニケーションの不自然さを生み、誤解を招くことがあります。

当事者は、他人からの目線や評価と、自分ではどうしようもない吃音症状の狭間で板挟みにあっているのです。

やりたいことができない

どもることを恐れ、やりたいことを制限することになったり、行きたい場所に参加できないことがあります。新しい出会いの際には、自己紹介などの会話がつきものです。

本当は話したいのに、話せない辛さを多くの人が抱えています。

また、美容室の予約や、病院の診察など日常生活の中で、名前を言わなければいけない場面があります。また、外食時に注文する際、食べたいものがあっても商品名が言いづらくて言えないという悩みも多くの人が経験しています。

気持ちを楽にしていくために


吃音で悩みながらも、一生懸命に生きているあなたに、少しでも気持ちが楽になる方法をご紹介します。以下、ご参考になさってください。

一人に話す勇気を持つこと

もし、あなたが誰かに吃音のことを話したことがないなら、自分の悩みを信頼のおける誰か一人に話す勇気を持ちましょう。

友達、先生、先輩、親に聞いてもらうことで、気持ちが楽になります。悩みは他人に聞いてもらうだけで、半分は楽になるものです。

吃音のことを話すことはとても勇気のいることです。もちろん無理に言う必要はありません。

吃音を乗り越えた人の本を読んだり話を聞いたりすること

世の中には、吃音があっても立派に社会で活躍している人がたくさんいます。そういう人たちの話を聞くのは、とても勇気が出ます。有名人については、こちらの記事でも紹介していますので、ご覧になってください。
記事:吃音がある有名人(国内・海外)

SNSなどを使ってみる

もし、あなたがツイッターなどで、同じように悩んでいる人とつながったことがないなら、一度インターネット内で吃音を抱えている人たちの声を聞いてみてください。たくさんの吃音を抱えている人たちが、それぞれの思いをつぶやいています。吃音の辛さをSNSで共有してみましょう。

吃音症の人はたくさんいることを知る

吃音は見えない障害であり見た目にわからない分、当事者以外はその苦しさに気づきません。この苦しさを抱えている人は、世界中で人口に対して1%いると言われています。

国や文化が違っても、吃音で悩む人たちは世界中にいるのです。私は、過去に海外でも吃音のある人たちのグループの場に参加したことがあります。その時に印象的だったのが、当事者の抱える困りごとは、国は違えどほとんど同じなんだということでした。

治療への取り組み

思い切って治療への取り組みを開始するのも良いです。ただし、費用も時間もかかりますので、必要があるかを考えた上で取り組むことをお勧めします。

まとめ

吃音を経験するということは、とても辛いことかもしれません。どもる経験をしながらも、社会で活躍している人もたくさんいます。吃音があって、どう生きていくかは自分で選択していくのです。あなたの人生が最大に花開くよう、時間をかけて考えてみるのも良いでしょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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