吃音は声の出し方だけの問題なのか?
ボイストレーニングをしたら吃音が良くなるのか?
腹式呼吸をすれば吃音が治るのか?
これらについて少し述べていきたいと思います。
歌を歌い出したら吃音が治ったという話
先日、友人と話していたら、「歌を歌ってから吃音が治った人を聞いた事がある」と言われました。
私もこれまでにもそういったことは聞いた事があります。
これについてお話ししますが、
まず、そもそも吃音とは発声の障害ではありません。
その根拠として、歌を歌う時にはどもりは出ないのではないでしょうか?
痙攣性発声障害などは歌っていても声が途切れますので、発声の運動器官に関しての問題です。
ですから発声のトレーニング、ボツリヌス注射、場合によっては発声器官の手術で回復が見られます。
吃音の場合には、発声の障害ではないので声の出し方を変えることは一つのアプローチであり、それだけで吃音を治すというのは無理があると言えるでしょう。
歌を歌う際に強く発声したりする事で、発声以外の部分(メンタルや自己評価)に変化をもたらし、改善する事もあるかもしれません。
ただ、声の出し方だけにフォーカスしてしまうと吃音への意識が強まったり、それができたかできていないかという部分に気を捕われてしまいます。
第一、生涯ずっと声のコントロールをし続けることは不可能です。
吃音の改善、コントロールとは自然な流暢性の発話をもたらすものでないと続ける事はできないのです。
腹式呼吸について
次に腹式呼吸についてですが、
腹式呼吸を丁寧に行うと副交感神経が優位になり、気持ちも身体も落ち着きます。
これも改善への一部分として用いる事はできますが、これを行って吃音を治すというのであれば、ずっと常に腹式呼吸を気にしていなければいけません。
これらは対処法として用いる事はできますが、吃音治療をこれだけで行うというのは視野が狭いように思われます。
これらで良くなった人もいるかもしれませんが、あくまで一つのツールとして考えていくのが良いです。
私も元々は発声だけで吃音をコントロールできましたし、セッションでは発声を用いる方も多くいらっしゃいます。
ただ、最終的には段階を経て水面下の吃音の部分まで吃音を無くしていくことが大事になってくるのです。
発声と呼吸は改善の役に立つ事はもちろんありますが、上記の点も踏まえて腹式や軟起声を用いていただければと思います。