吃音の症状と種類

ついやってしまう、どもらないための工夫と随伴運動

吃音でお悩みの方の中には言いづらい言葉があると、ついつい違う言葉に言い換えたり、言いたい言葉が発せなくて忘れたふりなどでその場をやり過ごしたりすることがあるのではないでしょうか?
この記事では吃音と共についつい行ってしまう行動について説明していきます。
自分に当てはまるものがないかをチェックしてみてください。もし一つでも当てはまる行動がある場合は、できるだけ早く吃音の改善に取り組む必要があります。

工夫について

吃音を持つ人は、言葉が詰まることを隠したり、ごまかしたりするために、以下のように、様々な「工夫」を行います。
後にも述べますが、吃音を改善するためには、工夫は止めた方が良いです。

挿入

挿入とは、言いたい言葉の前に、他の言葉を付け加えることで苦手な言葉をスムーズに言えるようにすることです。
例えば、「ありがとうございます」が言えない時に、「どうもありがとうございます」という具合に「どうも」を付けると、それに続く苦手な言葉を言えるようになるのです。

言い換え

言い換えとは、本来言いたい言葉を違う単語(別の言葉)で表現することをいいます。
例えば、「ありがとうございます」が言えずに、「すいません」と言ってしまうのは言い換えです。

間(ま)

間(ま)とは、言葉を話す前の、不自然な空白の時間です。
例えば、「あのさ、来週の天気予報を見たんだけどさ、日曜日は・・・(間)・・・晴れで、月曜は雨だって言ってたよ」と発話の流れの中で不自然な間をつかうことをいいます。

助走

助走とは、苦手な言葉を発する直前に瞬間的に早口になったり、言葉を挿入したりして、苦手な言葉を発する直前に勢いをつけて話すことをいいます。
例えば、「えっとあの、おはようございます」のように、「おはようございます」を言うために瞬間的に「えっとあの」を用いて勢いをつけることを助走といいます。

延期

延期とは、話すときに考えているふりをしたり、他の表現を挟むなどし、言いたい言葉の発語を遅らせることをいいます。
例えば「田中さん」という人名を言うのが苦手な人で説明してみましょう。
本当は「そういえば、田中さんまだ来ていないよね」と言いたいのに、
「そういえば、・・・・・(考えているふり)・・・・遅れちゃったのか(他の表現を意図的に挟む)、田中さんまだ来ていないよね」と、「田中さん」という苦手な言葉を延期して言うことを延期といいます。

忘れたふり・知らないふり

忘れたふり・知らないふりとは、本当は知っている事であっても、発語が苦手な言葉がある場合は、意図的に忘れたふりをしたり、知らないふりをしたりして、自分が吃音であることを隠すことをいいます。
例えば、友人と食事に行った時、本当は以前にも来たことがありお店の名前を覚えているのに、お店の名前が言えないので、知らないふり、または忘れたふりをすることです。

残気発声

残気発声とは、息を絞り出すように発語しようとすることをいいます。
例えば、言葉を出すときに最初の言葉が発語できず息を吐き出し「・・・・(無音の息)ぁありがとうございます」と、息を絞り出すように苦しく話すことをいいます。

随伴運動について

随伴運動とは、吃音の症状が出る際に、ついやってしまう動作のことをいいます。

例えば、次のような動作は吃音の随伴運動のよくある例です。

  • 反動をつけて首を振りながら勢いよく言葉を出そうとする
  • 手を振ったり、足で床にバンっと踏み込んだりする手や足の反動を使う
  • 着席時に腰を浮かして着席するように反動をつけて話す体を使う
  • 首をガクっと前に倒しながら反動をつける
  • まばたきをしたり、舌を出したりする
  • 口を大きく開けたり、あえいだりして大きく呼吸をする

これらの行動は何かしらの反動をつけて「とにかく言葉を出そう」とするための動作です。随伴運動を行うことにより、初めのうちは言葉が出ることもあります。しかし、一般的には、だんだんと慣れていくに従って、随伴運動をしても言葉が出なくなります
そのため、随伴運動は使わずに話す速度を落としたり、お腹の力を抜くなどして力まずに言葉を発すると良いでしょう。ただし、これはあくまで一般的な対処ということをご理解ください。吃音の改善法は人それぞれ違います。話し方を変えたり対処することが吃音改善法の全てではありません。
吃音の症状も人それぞれですので、ゆっくり話しても力まずに話しても言葉が言えないことは当然あります。その場合は個人の状態に合わせた対処法を身につけたり、支援を受けて本格的に吃音の改善に取り組まれたりするのが良いです。

回避行動について

また、吃音がある人は、どもることへの恐怖により、人との会話を避けたり、人と話す機会がある場所を避けたりすることがよくあります。これを「回避」といいます。

発話回避

発話回避とは、話したい気持ちよりも、どもってしまう怖さの方が勝ってしまい、話すのを避けることをいいます。
例えば、本当は他人に話しかけたいのに、どもるのが怖くて話しかけないということです。

場面回避

吃音が出るために話す場面を避けることをいいます。
例えば、自己紹介する機会を避けるために飲み会に誘われても行かないのは場面回避の行動です。

まとめ

このページでは、吃音を持つ人が言葉が出にくい時に行う「工夫」「随伴運動」「回避行動」について説明しました。
あなたはいくつ当てはまるでしょうか?
吃音症状は大人になっていくにつれ減っていくこともあります。しかし、実際にはここで説明した「工夫」や「発話回避」などの使い方がうまくなっているだけであることもよくあります。つまり、工夫や発話回避により症状を隠したり話すのを避けたりしているだけで、実際には吃音自体は減っていないのです。
そのため、吃音を改善するには、工夫をしなくても言いたい言葉を発語できるようにならなければなりません。言いたい言葉を発語できたという成功体験を持つことが最も大切ですので、たとえ多少どもったとしても工夫や回避を減らしていくことが大事です。
工夫を止めると言っても、どもることは辛いものです。改善するためには、どもりそうになった時に、楽に言葉を発せられるようになる言語訓練に取り組むのも良いでしょう。または、その他の方法での吃音を回復させていくセラピーを受けて、どもりを克服することも良いでしょう。
吃音症状は人によって様々です。一部の方は、セラピーに取り組まずとも、社会的立場が変わることや、自分に自信がつくことによって吃音症状が回復してくこともあります。
いずれにしても、吃音の改善に取り組むにあたって、工夫や回避をしなくても話せることを目指していきましょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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