重症度・検査

「私の吃音の症状は重いのか?軽いのか?」を知りたい

吃音を持つ方々の中には、「子供の頃からどもるけど、大人になったら治る」と言われていた方は多いです。中には「いつの間にかどもるようになってきたけど、自分はどれくらいの症状なのだろう?」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
ただ、症状の重さを決める指標がなければ、判断することすらできません。
そこで、このページでは吃音の重い軽いについてわかりやすく説明していきます。ここで紹介する判断基準を元に、あなた自身に合った吃音の治療にお役立てください。

吃音の症状が重いか軽いかを判断する方法


吃音が重いか軽いかを判断する指標は、たくさんあります。たとえば、以下のような角度から判断していきます。
・どれくらいの症状が出ているのか
・どんな場面で吃音が出ているのか
・吃音や話す状況についてどう感じているのか
症状は人それぞれであるため、まずは自己分析から始めてみることをおススメします。
例えば、症状はたくさん出るけど気にしないで話す人もいれば、普段は吃音が出ないように隠している人もいます。そのため、一見どもっていないように見える人であっても、実は電話をすることを強く恐れていたり、「吃音を知られたくない」と考えていたりする人もいます。
話す際にどれだけ恐れを抱えているのか、どんな状況で吃音が出ているのか、これらの自覚の面は周囲の人にはわからないことが多く、いわば心の中で抱えている苦しみです。
たとえ症状が周りから見たらそれほど多くなくても、本人はとても心の中で苦しんでいるのです。

かつて、私も自己紹介するのが嫌で、自己紹介の場面で自分の番が来る前にトイレに行き、自己紹介の時間が終わるのを待ったこともありました。子供じゃあるまいしと思うかもしれませんが、どもる予感が強くしている時などは対処の方法がわからないとどもってしまうわけですし、人前で恥をかくのは本当に辛いものです。こればかりは経験してみないとわからないのではないでしょうか。

吃音は進展するもの

吃音は、基本的に進展していくものです。
ここで、症状・場面・自覚における吃音の進展について、Bloodstein,Luper&Mulderの発表した吃音進展段階より引用し説明します。

第1層第2層第3層第4層
症状連発、伸発難発工夫回避
場面心理的圧力など場面が増える苦手言葉、場面などの自覚恐れがある
自覚なし気づくが、自由に話す悩みになる深刻な悩みになる

症状について

吃音の症状の多くは連発や伸発から始まり、難発へと進展し、さらに吃音を出さないための工夫を用いるようになります。さらにどもることが嫌で話すことを避け始めると、どもる回数は減りますがそれは吃音が減るのではなく回避症状があるということになります。
回避症状とは話すことを避けることをいいます。工夫や回避については以下の記事で説明していますので、よろしければご参照ください。
記事:ついついやってしまう吃音の随伴運動や話すときの工夫

場面について

どんな時にどもるかという場面の進展は、最初は慌てていたりプレッシャーがかかっている時にどもっているのが、場面が増えていきます。こういうときにはどもる、この言葉でどもると感じてきたらそれはさらに進展しているのを意味します。
もし苦手な場面があり、それを何週間も前から予測して不安を抱えているなら、吃音が深刻化しているということになります。

自覚について

吃音は最初は自覚がなく気づかないことが多いものです。他人に指摘されて初めて気づくという人もいます。自覚が出てもそのままはないしている段階からさらに意識が強まり悩みになっていきます。そして人によっては深刻化していくのです。
他人はそこまで気にしていないというのはわかっていても当事者としてはどもる恐怖ほど怖いものはありません。どもるから行動したくてもできない人は自覚の面で進展してるということです。

検査を行う

自分の吃音症状をきちんと把握していくためには、検査を行うという選択もあります。
吃音の検査では、吃音の症状の頻度や工夫の回数など、目に見える症状を見ていきます。また、コミュニケーションの困難度を調べる質問などを用いて、「どれくらい話す場面を苦手だと感じているのか、どれくらい避けている行動があるか」などを調べていきます。自分の症状が知りたい方は吃音を診ている機関で検査を行ってもらうのも良いでしょう。

まとめ

吃音は目に見える症状や行動の多さに加えて、心の中で起きている不安や恐怖を様々な角度から見ていき、軽いか重いかを判断していきます。
そのため、どもる回数が多いか少ないかだけでは、吃音の程度は分からないのです。ここで紹介したように、吃音に対するネガティブな認識や、どれくらい発話を避けていて強い不安を抱えているかも含めて判断していくことが大事です。
吃音の改善のためには、症状だけではなく、どもることに対する捉え方、当事者の置かれている環境なども考慮して適切な手段で一人一人に合わせて改善を進めることが良いと言えるでしょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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