プレゼン・スピーチ

吃音がある人のプレゼンへの対策

どもりで悩む人は、職場でのプレゼンで吃音が出てしまうと、参加者に「どう思われるか」が気になります。そのため、本来の目的であるプレゼンの内容どころではなくなってしまいます。この記事では、吃音を持つ人が少しでもプレゼンが楽になるためのヒントを書いていきます。

プレゼンで言葉が出ない時


プレゼンといっても、いろいろなプレゼンがあります。大学生ならゼミのプレゼンがありますし、社会人なら企画の発表など、内容は様々です。
吃音がある人の中には「資料もしっかり揃えたし、内容もわかっているのに、どもるのが悔しい」と、思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか?
例えば、
・プレゼン前の自己紹介のとき、自分の名前が言えない
・プレゼンの内容に関する「特定の言葉」が言えない
これらに悩まされて、内容を作成している段階で、言葉の順序を考えてしまったり、苦手な言葉を使わないように工夫していらっしゃる方もいます。

プレゼンで緊張する心理


緊張する理由としては、「どもりを見られたくない」「どもってはいけない」という考えが働くことにあります。また、「よく評価されたい」「どもって、変な人だと思われたくない」という考えが強く働くかもしれません。
しかし、吃音とは、うまく話さないといけないと思うほどに、緊張してうまく話せなくなります
※プレゼンでうまく話せないのが、あがり症による場合は、こちらの記事を御覧ください。
記事:あがり症と言葉がつまることについて

プレゼンでの吃音の困った時の対策


プレゼンで不安にならずに話せるためには、吃音治療を受けて、根本的に吃音を改善させることも手段の一つですが、まずは、その他にできる対策を考えてみましょう。

・パワーポイントなど視覚的な要素をたくさん使う

言いにくい言葉を視覚的に出していくことで、負担を減らすことです。伝わることが目的なので、視覚的に伝える方法でも相手は十分理解できます。話すことにこだわりすぎないようにしましょう。

・資料を配る

パワーポイントと同じく、参加者に資料を配ることにより説明する手間を少なくします。参加者も、あなたの準備した素晴らしい内容を、持ち帰ることができるというメリットもあります。

・自分の伝えるべきこと、何を伝えれば良いのかを確認する

そもそも、自分が伝えようとすることに迷いがないかを確認しましょう。吃音に意識が向きすぎて、心が迷っているときには、余計にどもってしまいます。自分が伝えることの本質について意識を向け、心を固めましょう。

・どもることを事前に伝える

どもることを事前に伝えることで、プレッシャーが下がり、どもりにくくなることがあります。どもってはいけない、どもりたくないという考えが、逆にどもりを強くさせるのです。
「私は、話す時にちょっとどもってしまうんですが、よろしくお願いします!」と、サラッと伝えることは、自分の緊張を軽くするための良い方法です。

・朝礼などの場合

周囲に理解を促すことができるならば、事情を伝えて配慮してもらうことも大事です。できることと、できないことを分けて考えることにより、余計な心の負担を減らせます。
どもらない発語を促すテクニックを使って、言いやすくするという選択肢もありますが、これには訓練が必要です。一人で行えればそれで良いですが、できれば、きちんと理解した上でテクニックを使えるようになる方が安心です。その場合には、専門家の支援を受けて、行う方が良いでしょう。

・自己紹介の場合

事前に会場の人と仲良くなっておくことも良いです。大事なことは、自分に対するストレスやプレッシャーをできるだけ下げることです。
「上手に話す」ことだけが正解ではありません。吃音が出たとしても、周囲と仲良くなれれば、本来の目的は達成されるのです。
また、当然ながら、吃音は安易な対策だけで乗り越えられるほど簡単なことではありません。吃音は日常にうまく適合することもできますが、特定言葉などが言えないことはよくあることです。
可能な範囲で対処を行い、それ以上の負担を感じるようなら本格的に吃音の治療に取り組むのも良いです。

プレゼン上達への努力


プレゼンの上達法として参考になるお話を紹介します。iPS細胞研究でノーベル生理学・医学賞を受賞された山中教授は、かつてアメリカで学んでいた時に、プレゼンの練習をたくさんされたそうです。
自分のプレゼンを録画して、それを自分のいないところで他者に評価される。さらにその評価を自分が見る。その繰り返しで、自信をつけていかれたそうです。
もちろん、吃音の悩みは、「プレゼンが苦手なこと」とは、根本的に違います。プレゼンが上手ではなく、「人前でどもること」に恐れて悩んでいる人がほとんどです。
ただ、自分のプレゼンを総合的に把握し、自信が出ることにより、気持ちが楽になる人の場合には、自分を客観的に見るという方法は役に立つでしょう。第三者目線で自分のことをよく理解することが大切です。
そして、練習をするときは他人に協力してもらい、他人の見ている前で行った方が良いです。一人で練習している時は、吃音は出ないことが多いからです。

まとめ

プレゼンでどもるときには視覚的資料などを上手に使うことも一つの方法です。できるだけ自分にかかるプレッシャーを下げることを考えましょう。また、自分のことを客観視できることが落ち着きにつながることがあります。
必要に応じて治療という選択をするのも良いです。治療は、ある程度の期間を要することもあるため、その点も考慮して選択しましょう。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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