トレーニング

吃音を治すにはどのようなトレーニングがあるのか?

吃音改善のためのトレーニング、吃音を良くするためのボイストレーニングには、どのようなものがあるのでしょうか?この記事では、吃音改善のための発声のトレーニングについてご紹介していきます。

吃音を改善していくためには

まず、吃音の改善手法は様々であり、話し方にアプローチするものもあれば、そうでないものもあります。当然のことながら、人によって、どのような取り組みを行っていけば良いかは変わっていきます。
この記事でご紹介するのは、話し方のトレーニングに関するものです。他の方法については、他の記事でお伝えしていきます。

話し方のトレーニング

話し方のトレーニング(テクニックを使い、吃音をコントロールする試み)を使って、吃音を改善または楽にすることができます。
ただし、この方法が合っているかどうかは、人によります。また、テクニックを使うことで、吃音が治るのではなく、上手に管理できるようになるということです。
<ご注意>
このようなテクニックを用いた場合、一時的な効果で終わることがあります。どもりの改善は、吃音の全体像(当事者の日頃の思考パターンや行動、これまでの吃音経験など)を考慮して取り組むことが望ましいです。

基本的な言語トレーニング

・ゆっくり話す


話す際に、ゆっくり話すことです。どもっていても、どもっていなくてもゆっくり話すように練習していきます。特に、早口になりがちな場面では、最初からゆっくり話すことを心がけてください。
どもるときだけゆっくり話しても効果は薄まります。話すときには、相手のペースに合わせずに、自分のペースを知り、話しやすいペースでいることです。

・軟起声

柔らかく、そっと声を出していくやり方です。息混じりの声を出すように、そっと優しく声を発するのです。
言葉の出だしを弱く発声すること、声帯(喉にある声を発生するところ)の振動に意識を向けていくように心がけましょう。
下記画像は、軟起声を使って「おはようございます」と言っているときの音声データです。出だしの音が小さいのがわかります。

 

・消去法

キャンセレーションと呼ばれるこの方法は、吃音の難発症状が出た時に、そのまま言葉を発するのではなく、少し時間的余裕を持つことを心がけます。
そして、話し出した時に軽いどもりで済むように、段階的に話せる練習をしていきます。段階的とは、ささやき声で話したり、ゆっくりと声を出していくことです。自分で行うよりは、経験豊かなセラピストの指導のもと行う方が良いです。

・引き出し法

この方法は、どもり出した時に、そのまま続けてどもることを止め、自分で発話がコントロールできるまで話すことも止めていくようにします。
発声機関を楽に接触するように声を出し始め、話し始めます。この訓練もセラピストの指導のもと、行う方が良い訓練です。

・音程を伴う発声


話すときに、音程を意識する方法です。話し言葉の最初の出だし(例えば、「おはようございます」の「お」)に音程をつけるようにして発声をしていく方法です。
歌を歌う時には吃音が出ないという原理を利用し、音程に注意がそれることで、どもりづらくなります。奇異な状態にならないように、自然に使わなければいけません。

・バウンス法

最初の文字をわざと一文字だけバウンスさせます。バウンスとは、ボールを地面に立ていて跳ね返すような状態を意味します。
言い換えると、わざと2、3回またはそれ以上、軽くどもるようにし、言葉を発していくのです。慣れが必要ですので、練習してから使った方が良いです。難発で全く言葉が出ないよりは、バウンスで出していこうとの意味が含まれています。

・声帯の軽い接触

声帯とは、喉元に位置する声を発声させるところです。手を当てて、声を出すと振動を感じることができます。声は、声帯が振動することにより発せられます。難発で言葉が発せられないときには、声帯の動きが止まっているのです。
声帯の軽い接触とは、息の流れを丁寧に行い、そっと声帯を振動させていく方法です。いきなり声を押し出そうとするのではなく、そっと声帯を振動させることは、難発など声が出ないときにも有効なことがあります。

・声帯に手を当てる

声帯に手を当てて、声帯振動を意識して言葉を発することも、楽に発声する際に役立つことがあります。また、声帯振動が持続している感覚を意識していくことで、話しやすさを感じることができます。

・斉唱


他人と一緒に本を読んだり話したりする練習です。吃音は、誰かと一緒に話すときに、軽減または消失します。なめらかに話す感覚を取り戻すという意味でも、斉唱を行うことで、自然な話し方が実感できます。誰かに協力してもらい、一緒に読んでいきましょう。
ここでご紹介しているものは主に古典的な内容であり、言語トレーニングの全てではありません。ここには書ききれませんが、様々な手法があるのです。
一つの方法でうまくいかなければ、他のものを試すのも良いです。一つだけではなく、自分に合ったものをいくつか組み合わせていくことも大事です。

本読み練習などをする場合

反復練習で慣れることは大事ですが、どもらないように読もうと思って練習しても効果は薄いです。その状況なども考慮し、対策を立てて行う必要があります。
普通に本を読むだけの練習は、「どもらないようにしよう」と考えて練習してしまいます。古典的なセラピーでは、そのようなことも行われていました。
もともと、一人で読むときには、吃音が出ない人が多いです。単なる本読みを行うことで、効果がある人もいますが、逆効果として、吃音を意識させてしまうこともありますので気をつけてください。

実践できないと意味がない

吃音は話し方だけの問題ではないため、トレーニングをすれば誰でも吃音が改善されるという考え方は間違いです。吃音は個人によって、症状や吃音経験などが違います。そのため、吃音改善のためのトレーニングは、マニュアル化しても万人に用いることが難しいのです。
吃音改善のための言語トレーニングは、個人に合わせて様々なテクニックを組み合わせて行います。実際に効果が出るようにするためには、細やかな指導が必要になります。
他の記事でも述べていますが、吃音の改善は、身体面だけではなく、心理的な側面もしっかりと把握し、個人の状態に合わせて、細かく分析しながら進めていくことが大事です。

まとめ

吃音改善のための言語トレーニングは、様々なやり方があります。テクニックだけではなく、個人の吃音全体像を把握し、抱えている問題に合わせて取り組みをしていくことが大事です。
話し方だけで吃音症が治るかという点については、こちらの記事でお伝えしています。併せてお読みください。
記事:話し方を変えれば吃音は克服できるのか?

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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