「吃音の人は優しい人が多い」と言われることがあります。他にも、「おとなしい」「頭が良い人が多い」などとも言われています。吃音を持つ人には傾向性があるのでしょうか?この記事では、吃音を持つ人の傾向についてお伝えしていきます。
もくじ
吃音のある人は、どんな性格の人が多いのか?
これまで吃音研究の世界において、多くの研究者が気質を重要視してきました。そして、近年、吃音研究者ライリーらが行った研究により、吃音の発症原因には性格や気質、感情などは関係がないことがわかりました。
過去に、吃音研究者オイラーが行った調査では、「吃音のある成人の方が、吃音のない成人よりも情動的に過敏である」との報告がされていました。このことについて吃音研究者バリー・ギターは「これは、何年もの間どもり続けた結果とも考えられる」と述べています。
親から見た子供の傾向
別の研究では、吃音のある子の親は、吃音のない子の親よりも「自分たちの子供は神経質である」と捉えているという類の研究報告もあります。このことについて、吃音の原因として気質が関係しているのではなく、「発症した吃音が持続していくのに気質が関わっている可能性」を指摘する研究者もいます。
ここまでをまとめると、
・吃音が発症する原因には気質は関係ない
・持続要因として気質などが関係している可能性がある
ということになります。
吃音が発症することによる社交不安
社交不安とは、他人と接することや、スピーチなどの特定の行動を行い際に恐れを抱く不安障害の一種です。吃音がある人は、社交不安障害を併せ持つことが多いことが知られています。
吃音があると、失敗したくないという思いから、「うまく話せるかどうか」「他人からどう見られるか」に注意が向きやすくなります。
社交不安については、こちらの記事でも解説しています。併せてお読みください。
記事:吃音のある人の多くが抱える社交不安とは?
どもる人は優秀?
「どもる人は優秀だ」と言われることがあります。それとは反対に、「吃音のある人は、優秀ではない」と言う意見もあります。これらについては、どうなのでしょうか?
今のところ、これらの根拠となるような事実はなく、優秀さと吃音は全く関係ないです。
他にも、吃音のある人は美人なのかイケメンなのかとの疑問を持つ人がいますが、これらも全く関連はありません。吃音があってもなくても、そのような特性があるわけではないのです。
言語習得の際の副産物
幼少期から発症する発達性吃音の原因の70%は、どもりやすい体質があると言われています。言葉を話し始める時に、口がついていかないため、つっかえてしまうことが、発達性吃音の始まりです。吃音は、言語を習得する時に起こる「副産物」ということです。
吃音発症の時には、言葉がたくさん頭の中に溢れてきて、話そうとした時に、「どもりやすい体質」があるため、つっかえてしまうのです。
どもる我が子を見たお母さんが、「あなたは、頭の回転が速くて口がついていかないだけなのよ」と子供を励ますことがありますが、これはお母さんの優しさから出た励ましです。
「頭の回転が良いのでそういうことが起こる」と捉えたほうが本人の気持ちも楽になるのではないでしょうか。
吃音の人は優しい人が多い?
吃音を持つ人は、優しい人が多いと言われることがあります。もしかすると、感受性の強くなることが、その理由に関連しているのかもしれません。
また、吃音によって「つらい体験」をした人は、「つらい体験」をした時の「心の痛み」を知っています。それゆえ、他人が「つらい体験」をした時に、「他人の心の痛み」が理解できます。
その側面から見て、傷ついた経験をすることによって他人に対して優しくなる傾向があるとも考えられます。「吃音の人はみんな優しい」ということを明確に示す根拠はありません。気質と経験それぞれの影響が考えられるのではないでしょうか。
まとめ
吃音を持つ人の多くは、どもりやすい体質を持っていると考えられています。気質については、吃音の原因とは関係ないとされていますが、気質が吃音持続に関係している可能性があります。