話し方

話し方を変えれば吃音は克服できるのか?

どもりは話し方の問題なのでしょうか?克服するために話し方教室に行くべきなのでしょうか?
この記事では、話し方と吃音の関係、話し方を変えていくことの有効性などをお伝えしていきます。

吃音は、話し方の問題なのか?

「話し方を変えることで吃音は克服できるのか?」というと、そうではありません。話し方だけで吃音が改善できるできる人は少なく、できない人の方が多いです。
これまで、吃音を矯正しようとする古典的なセラピーでは、話し方に重点を置いた矯正法が行われていました。そのため、吃音は話し方を変えていくことで克服するというイメージを持つ方が多いかもしれません。
現在でも、そういうセラピーはあるのですが、言語療法以外の面を中心としたセラピーもあります。ゆっくり話せばどもらない、滑舌が悪いからどもるという見方がありますが、これは正しいとは言えません。吃音とは話し方だけの問題ではなく、心理的な側面が大きく関わっているからです。

話し方を変えることのメリット

話し方を変えることで吃音を克服し、話しやすくなる人がいるのも事実です。ここでいう話し方とは、発声のコントロールも含めたものです。単にゆっくり話す、高い声で話すなどのものではなく、根本的な発声のやり方も含まれます。
もし、あなたがこの方法を行うとすると、あなたの吃音の状態に合わせた適切なテクニックを用いていく必要があります。自分の吃音が出るときの仕組みを理解し、それを自分の思うようにコントロールするということです。
吃音をコントロールできるようになると、安心感が生まれます。今までは、「言えない。どうしよう・・」と思っていた場面でも、「こうすれば言える」と思えるようになります。
当然ながら、テクニックは、実際に使えることが大事です。もし、話し方を変えても、すぐに使えなくなるとしたら、それは、テクニックとは呼べません。いつでも使える「再現性の高いテクニック」は、会話の状況に安心をもたらすのです。
ひと昔前に、「わーたーしーはー」などのように言葉をわざと引き延ばす矯正法など、恥ずかしくて実行できないような練習法が存在していました。
こういう類の古典的アプローチは、今ではほとんど使われていません。なるべく自然な会話に近いように、話せることが大事です。

場に慣れていくことは効果があるのか?


場に慣れていくことで不安が少なくなることもあります。ただ、慣れるだけで吃音そのものを改善できるかといえば、そうではありません。いくら慣れても、どもる反応が続くことはよくあります。
慣れることによって効果が出る人もいますが、すべての人に適用されるわけではありません。やみくもに話す機会だけを増やしても、吃音は治らないことが多いです。
社交不安を伴う吃音症では、過剰に緊張が働くことがあります。緊張が問題の中心であるなら、社交不安の問題を解決することが大事です。補足ですが、あがり症は社交不安であり、慣れれば治るものではありません。適切な治療が必要なのです。
記事:あがり症と言葉がつまることについて

状況を理解することの大切さ

吃音が起きているときには、様々な要因が複雑に絡み合っています。これは人それぞれ違います。
ここで一つの例を挙げてみましょう。
【例:Aさん 男性 25歳 会社員】

Aさんは、会社の会議で吃音が出て困っています。月に一度の会議の際、自分の番が回ってきて、話そうとする前から吃音のことが気になり、不安になってしまいます。
この時のAさんの状況はどうなっているのでしょうか?以下、書き出していきます。
・Aさんは、そもそも、上司に対して構えている。
・目上の人に対して「きちんと接しないといけない」という考えを小さい頃から教育されている
・自分の意見が上司に評価されることを恐れ、上司に気に入ってもらえるような意見を言おうとしている
・体は、不安のために固くなり、呼吸も浅くなる
・「早く言わなければいけない」「どもってはいけない」という思いにかられ、焦って話し始める
ただ単に、「どもる」のではなく、上記のような状況の中で、吃音は起こっています。あくまで一つの例ですので、このような状況は無数の例があります。
いずれにしても、テクニックとは、このような状況を解決しながら、実際に使えるようになることが大事です。単に言いやすい言い方を習得すれば、吃音が克服できるかというと、そうではない場合が多いのです。

テクニックを使っても効果が見られない人は、どうすればいいのか?

状況を考察しながら、テクニックを使っていく取り組みには、認知行動療法などが有効です。自分の思考パターンや行動パターンを把握しながら、吃音を改善していくのです。
そういった取り組みを行いつつ、吃音を発語のテクニックで乗り越えられない場合には、方法を変えた方が良いです。その場合は、心理的な側面などに吃音の問題があり、テクニックで乗り越えられる状況ではないのです。
この記事では、発語のテクニックが有効なように書いている面もありますが、実際には、テクニックだけで吃音を乗り越えていく人は、それほど多くはありません。吃音といっても、人によって様々な状況がありますし、克服するためのアプローチも様々なのです。

まとめ

吃音症は話し方を変えるだけで克服できるわけではありません。一部の人には効果があっても、すべての吃音症に効果があるとは限りません。個人に合わせて適切に改善に取り組むことが大事です。

  • この記事を書いた人

畦地 泰夫

東京吃音改善研究所代表。公認心理師。国際流暢性学会(IFA)会員。日本吃音流暢性障害学会会員。日本コミュニケーション障害学会会員。1人ひとりに合わせた吃音改善を掲げ東京吃音改善研究所を設立。吃音症、社交不安障害のカウンセリング実績は1万回以上。

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